仏銀のギリシャ国債の公正価値に関する会計処理についてIASBが問題視

ギリシャ国債の損失拡大懸念も高まる。仏銀など欧州銀が2011年1~6月期決算で計上したギリシャ国債の減損損失の会計処理を、IFRSを作るIASBが問題視しているためだ。現在、欧州銀が採用する金融商品の会計処理では、国債はトレード目的の「売買目的」と「満期保有目的」に分類される。IASBが問題視するのは売買目的の会計処理だ。
(日本経済新聞2011年9月15日9面)

【CFOならこう読む】

「1~6月期決算では独コメルツや英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは売買目的のギリシャ国債を市場価格を参考に、それぞれ51%、50%減損した。一方、パリバやソシエテ、アグリコルなどは21%の減損にとどめた。市場での取引量が極端に落ち込んでいるため、市場価格は正当な価値ではないと判断。ギリシャの第2次金融支援に伴う民間負担で、国際金融協会(IIF)が試算に用いた数字を使った。

IASBは市場機能が低下しても、市場取引がある限り無視してはならないと主張。関係者によるとIASBは「会計基準の解釈の問題ではなく明らかな逸脱」と捉えており、欧州規制当局はIASBの通知を受けて対応を検討している」(前掲紙)

IAS39(IFRS13「公正価値測定」が公表されており、2013年1月1日に発効されます)は、公正価値の測定基準として、「活発な市場」が存在する場合は「公表された相場価格」が最も強力な証拠となる、存在しない場合は、取引事例、類似する金融商品価格、割引キャッシュフロー分析、オプション価格算定モデル等の「評価技法」を用いて算定する、としています。

「活発な市場」がある場合とは、相場価格が容易に入手可能で、それが独立第三者間条件にもとづき実際に、かつ、定期的に行われている取引」 が存在する場合と定義されています。

仏銀は、「活発な市場」が存在しないから「評価技法」すわなち国際金融協会の試算を公正価値としたのですが、IASBは、取引量が落ち込んでいるとしても、「活発な市場」は存在するから、これを無視することは許されないと言っているのです。

いずれにしても、民間企業の会計処理の是非についてIASBが直接モノを言うのは異常であると感じます。

そんな権限がIASBにあるのでしょうか?
あるのだとしたら監査人との関係はどのように整理されるのでしょうか?

何だかとんでもなく空恐ろしいものを私たちは導入しようとしているのかも知れません。

【リンク】

なし