経団連会長、復興財源消費税考慮を

経団連の米倉弘昌会長は20日、日本経済新聞のインタビューに応じた。野田佳彦政権に東日本大震災からの復興政策の加速を求めて要望。復興増税の期間は「10年は少し長すぎる」と述べ、財源として消費税も考慮に入れるよう求めた。政府が被災地で検討する「復興特区」で法人実効税率(現在約40%)を引き下げるよう要望。円高対策としては、企業の競争力強化を促す施策が必要との見方を示した。
(日本経済新聞2011年9月21日7面)

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米倉会長は、復興財源について、3つの「基幹税」の組み合わせにすべきだとの認識を示しています。
法人税増税について「法人税引き下げは3年くらい結構だ」と語り、2011年度の税制改正で合意された法人税の実効税率5%引き下げを3年間先送りすることを容認する姿勢を示しています。

政府税調は、5%減税したうえで3年間だけその一部を増税する案を示していますが、これと実効税率引き下げを3年間先送りすることは同じではありません。

2011年の税制改正は、減税と繰越欠損金の使用制限等課税ベースを広げることがセットでしたから、減税後増税というのは、課税ベースが広がる分だけ増税になる可能性があることに留意すべきです。

復興財源の議論の中で、日本企業は諸外国に比べ法人課税の負担率が低い、という声を聞くことがあります。例えば、法人課税の負担に関するGDP 対比による国際比較では、アメリカ、イタリア、フランスより低いという調査結果もあります(リファレンス平成22年10月号 「企業の法人税等負担の計測手法と国際比較 」財政金融課 加藤 慶一 [PDF]117頁)。

しかし繰り返しお話ししているように、最も重要なのは国内における雇用です。そのためには企業が日本から出ていかないように、そして多くの外国の企業に日本に来てもらうようにする必要があります。
言うまでもなく、企業の立地戦略上、法人税等の負担がどれくらいかは重要な検討項目の一つになります。
そこで検討されるのは、言うまでもなくGDP対比の国際比較なんぞではなく、税引前利益に対する法人税等の負担率です。

この点で見ると、日本企業の法人税等の負担は諸外国に比べ圧倒的に高いのです。

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最低限、この事実を前提に議論して頂きたいものです。

【リンク】

リファレンス平成22年10月号 「企業の法人税等負担の計測手法と国際比較 」財政金融課 加藤 慶一 [PDF]