上場外国株式の強制評価減

JFEホールディングスは3日、2011年4~9月期に810億円の有価証券評価損を計上すると発表した。出資するインドの鉄鋼大手、JSWスチール株の下落による評価損が600億円強と大半を占める。
(日本経済新聞2011年10月3日15面)

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「JFEは昨秋以降にJSWスチールに約1000億円出資し、高炉の共同建設を検討するなど提携関係を深めている。JSW株は主原料の鉄鉱石が十分に調達できずに減産を強いられたことなどから、夏場以降、急落していた」(前掲紙)

金融商品会計基準20項では、

「満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち、時価を把握することが極めて困難と認められる金融商品以外のものついて時価が著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。」

とされています。

この「著しく下落した」かどうかについて、金融商品会計実務指針第91項は、

「時価のある有価証券の時価が「著しく下落した」ときとは必ずしも数値化できるものではないが、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。この場合には合理的な反証がない限り、時価が取得原価まで回復する見込みがあるとは認められないため、減損処理を行わなければならない。」

としています。

外貨建有価証券の場合、この「著しく下落した」かどうかは、外貨建取引等の会計処理に関する実務指針19項は、「外貨建ての時価と外貨建ての取得原価とを比較して判断する」としています。

その結果著しく下落したと判断される場合には、外貨建ての時価を決算時の為替相場により円換算し、この場合に生じる換算差額は当期の有価証券の評価損して処理されます。

従って、大きく円高に振れている現在のような状況においては、外貨建ての時価で見ると50%程度の下落でも円貨で見るとさらに大きな損失を計上しなければならない事態が想定されるので、注意が必要です。

例えば、市場価額20ドル、1ドル120円で取得した外国株式の期末時の市場価額が10ドルとなり、強制評価減を行う場合、外貨建ての取得原価と時価との比較では20ドルから10ドルと50%の下落ですが、円貨ベースで見ると、期末時の為替相場が1ドル80円であるなら、20×120=2,400円→10×80=800円と下落率は66.7%となり、2,400-800=1,600円を損失計上されることになります。

【リンク】

2011年10月3日「平成24年3月期第2四半期 投資有価証券評価損に関するお知らせ(連結)」JFEホールディングス株式会社  [PDF]