ラウンドワンのセールスアンドリースバック

東日本大震災後に「安近短」レジャーの代表格として注目されたラウンドワン。ボーリング場やカラオケ、ゲームセンターなど丸ごと備えた大型店舗が売り物だが、今その出典戦略が大きな転換点を迎えた。用地と店舗を売却して賃借に切り替えるなど「所有から利用へ」カジを切り、膨らんだ資産を圧縮して得た資金を債務返済に充て始めた。杉野公彦社長は「2016年3月までに実質無借金にする」と宣言。将来の米国進出などに備えて財務体質の改善を急ぐ。詳報を伝えている。
(日経ヴェリタス2011年10月23日16面)

【CFOならこう読む】

「大阪一の繁華街、梅田に3月開業した「ラウンドワン梅田店」。13階建てのビルの3~13階にボウリングやカラオケ、ゲームセンターなどが集まり店舗面積は1万5000平方メートルにのぼる旗艦店だ。

しかしこの店舗、実は開業の2週間前に売却されていた。売却と同時に賃借契約を結ぶセールスアンドリースバックという取引のため、店舗は予定通り開業して営業している。この取引では、数十億円規模の売却損が発生。ラウンドワンは前期決算で、他の店舗でも同様の売却損を計上し、126億円の最終赤字に転落した。
損失を出してまで売却を急ぐ理由は、前期末で1361億円と自己資本の1.7倍に達した有利子負債を圧縮するためだ。」(前掲紙)

セールスアンドリーズバックと言っても、その多くはファイナンス・リースであると思われます。

ファイナンス・リース取引とは、次のいずれも満たすリース取引をい言います。
(企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」5項)

(1) リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引

(2) 借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもた らされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に 伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引

そしてこの要件に該当するかどうかについては、その経済的実質に基づいて判断すべきものですが、次の(1)又は (2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定されます。
(企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」9項)

(1) 現在価値基準
解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(以下「見積現金購入価額」という。)の概ね 90 パーセント以上であること

(2) 経済的耐用年数基準
解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね 75 パーセント 以上であること(ただし、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の 中古市場の存在等を勘案すると、上記(1)の判定結果が 90 パーセントを大きく下回る ことが明らかな場合を除く。)

ラウンドワンの場合、リース資産が、2010年3月期 252億円から2011年3月期392億円に急増しているのは、セールスアンドリースバック実行に伴うものと思われます。

PLでは2011年3月期に特別損失として、出店計画変更損失が214億円計上されており、ここにセールスアンドリースバックに伴う売却損が含まれていると考えられます。

セールスアンドリースバックに伴う売却損益は、長期前払費用又は長期前受収益として繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減 して損益に計上するものとされています。
(企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」49項)

しかし、ラウンドワンの場合、繰延処理ではなく一括費用処理によっています。

これは、企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」49項の次の項目に従ったものと思われます。

「当該物件の売却損失が、当該物件の合理的な見積市場価額 が帳簿価額を下回ることにより生じたものであることが明らかな場合は、売却損を繰延処理せずに売却時の損失として計上する。」

【リンク】

2011年3月10日「『ラウンドワン梅田店』」の売却と賃貸契約締結に関するお知らせ」株式会社ランンドワン [PDF]