企業統治を聞く – 委員会設置会社の利点

経営の透明性を高めるうえで、委員会設置会社の導入が有効との意見を持つ識者は多い。東京経済大学教授でNPO日本コーポレート・ガバナンス研究所代表理事の若杉敬明氏と、企業統治に詳しい大和総研主任研究員の藤島祐三氏に理由を聞いた。
(日本経済新聞2011年11月18日13面)

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委員会設置会社の利点について、若杉氏と藤島氏はそれぞれ次のように述べています。

若杉氏「ガバナンスの機能を果たすには欧米で定着した委員会設置会社が望ましい。統治には優秀な経営者を選ぶ『指名』、動機づけにつながる『報酬』、不正を防ぐ『監査』の3要素があるが、委員会設置会社はそれぞれに対応した機能を持つ」(前掲紙)


藤島氏「日本での導入率が低いが、委員会設置会社の方が利点が多い。社外取締役の設置を義務付け、執行役に権限を大幅に移譲するからだ。外部の人間に権限を与える点をプレッシャーに感じる経営者もいるだろうが、優れた企業統治は不祥事の抑制に役立つだけでなく、業績
向上にも寄与する」(前掲紙)

そもそも、何故日本ではそれほど利点の多い委員会設置会社が少ないのでしょうか?

それは、経営者が自らを頂点としたガバナンスシステムを変える理由がないからです。漸く手にした社長の椅子を、末席に置き直すようなご立派な人はそうはいません。

日本企業のガバナンスの仕組みは、戦後の日本が選択した社会システム(終身雇用制、年功序列、政官財癒着の構造等)の中で出来上がってきたものです。私企業に、はいはい委員会設置会社が望ましいからそちらに変えましょうね、と誰かが言っても無視されるか、衣だけ着せ替えて変わったふりをするだけの話です。

資本市場の規律に期待する向きもありますが、大前研一氏が言うようにプルドックソース事件の後ホームレスマネーはぱったりと日本に入って来なくなってしまい、それとともに物言う株主の陰もすっかり薄くなっています。

何だかとても八方ふさがりですが、ここは政治のリーダーシップに期待するしかないように思います。対処療法や利害調整ではなく、日本の行く道を照らすビジョンと、それを実現する具体的な方策を示すことを今こそ政治家に期待したいと心から思います。

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