セブンイレブンジャパンをスピンオフー非課税ではできません

セブンーイレブン・ジャパンの出店攻勢に競合各社が戦々恐々としている。今期は過去最高の1200店を予定。ローソンより6割多く「独走」に拍車をかける。「来期以降の2年間はさらに拡大する」ー鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス会長はこう明かす。一度は成熟したといわれた市場での攻勢。背景には店舗の競争力への強い自信がある。
(日本経済新聞2011年12月9日15面)

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「しかし不思議と株価がついてこない。セブン&アイのこの半年の株価は横ばい。ローソンが13%、ファミリーマートが5%上昇したのに対し、明らかに出遅れている。指摘されるのは「コングロマリット・ディスカウント」だ。コンビニは好調だがイトーヨーカドーやそごう・西武などグループ企業の収益力は見劣り。「様々な事業を抱えるが故に戦略や強みがわかりにくく、株価が割安になっている」(大和証券キャピタル・マーケッツの津田和徳チーフアナリスト」(前掲紙)

それなら、スピンオフすれば良いのにと思います。

スピンオフとは、株主に対して既存子会社または事業を切り出して設立した新設子会社の株式を交付することによって、当該子会社または事業を切り離す組織再編を言い、会社法の現物配当を利用することにより実現可能です。

ところが課税上の問題があって、「適格現物分配」に該当する場合を除き実行不能となっています。

「現物配当による子会社株式の分配に関しては、我が国では、米国の連邦所得税の場合のように一定の場合に法人レベル及び株主レベルでの課税繰延べを認める規定が存在せず、課税当局は、原則として、法人レベルでは分配対象となる子会社株式に関する譲渡損益課税がなされ、株主レベルではみなし配当課税及び譲渡損益課税がなされるものとして、それぞれ取り扱っている」(太田洋 「組織再編を用いたM&A・企業グループ再編と課税」租税研究・2011年10月号161頁)

スピンオフは、株主の配当課税をキャピタルゲイン課税を変換するdeviceとして租税回避に利用される可能性があるため、米国でも厳格な要件のもと課税繰延べを認めていますが、日本では課税繰延べを認める規定が存在しません。

せっかく会社法が用意してくれている経営ツールを、税制が阻害し、実際上利用出来ない現状には大きな問題があると思います。

ところで、スピンオフに関しては、経済界からその必要性について主張する声が聞こえてきません。株主を重視しない日本の多くの経営者にとって、ただで子会社を株主にくれてやるスピンオフはそもそも検討するに値しないということなのかも知れません。

もしそうであるなら、コーポレートガバナンスの欠如を税制が助長しているように私には思えます。

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