東証、予想の開示推奨

上場企業による業績予想の開示多様化を検討している東京証券取引所は、社内に収益の計画や目標数値がある場合、従来通り売上高、利益の予想を公表するよう推奨する方針を決めた。
(日本経済新聞2011年12月28日13面)

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「新しい予想開示は2012年3月期の決算発表から実施する方針。自主的で多様な開示方法を認める。予想に幅を持たせて開示したり、米国企業のように1株当たり利益の予想を公表したりする企業も出てきそうだ。予想を出さない場合に求めていた事前相談や理由の公表なども不要にして、企業の自主性を重視する」(前掲紙)

新しい予想開示の方向性は、今年7月に公表された「「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」に従った形で行われます。

報告書の概要は以下の通りです。

「通期の決算発表時に売上高・利益等の所定の項目について特定の値による開示を行うと いう原則的な取扱いにこだわり過ぎると、合理的とは言えない業績予想の開示が行われた り、上場会社に必要以上の負担をかけたりするおそれが高い。そこで、経営者自身の合理 的な評価や見通し等に基づいて、経営成果に係る直接的な予想が示される規格化された開 示の有用性を確認しつつ、上場会社各社の実情に応じて、多様な方法による柔軟な開示を 積極的に行い得るようにすることが望まれる。

✔ 開示内容
・ 予想値に一定の幅が出るケースやすべての項目を予想することが難しいケースについては、
諸外国で、一定の幅を持った表現が使われていたり、開示項目が各社で異なっていたりする
ことが参考となる。
✔ 開示時期
・ 決算発表の時点で業績予想を有していない場合には、投資判断上重要な情報格差を生じさ せないという観点から、その後、合理的な業績予想を有した時点で開示をすることが重要。
✔ 予想対象期間
・ 1年の見通しが難しい場合には、各社の状況に応じた期間を対象として開示する例が参考
となる。
✔ 将来予測情報の提供、補足説明等の充実
・ 売上高・利益以外の経営指標など、様々な将来予測情報を開示することは有用。また、前 提条件や変動可能性等の説明が重要。今後補足説明の重要性は一層高まる。」

予想を出さないことも容認されますが、大幅な財務数値の増減が見込まれる場合、具体的には予算や計画が前期実績と比べ売上高で1割、利益で3割以上増減する場合は、適時開示の義務が生じる、というのが今日のニュースです。

多くの会社において、予算は達成目標と位置付けられています。達成目標ですから、売上高1割増なんていうのは普通に見られます。こんなものを適時開示する必要性は全くないでしょう。東証の方向性は良いと思いますが、詳細なガイドラインがないと実務サイドは相当に混乱すると思います。

年内の更新はこれで終わりにします。2012年が世界中の人々にとって良い年でありますように。

【リンク】

「決算情報の適時開示制度 業績予想開示」