アップルのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

同社(アップル)の手元資金は現在760億ドル。米政府の現金残高とも肩を並べる水準だ。その強さはどこから来るのか。ヒントは一つの財務指標にある。「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」。在庫と売掛金、買掛金を比べ、製品の製造から現金回収にかかる時間を探る指標だ。
(日本経済新聞2012年1月17日1面)

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キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは、資金の効率性を示す指標のひとつで、売掛金と在庫の回転日数から、買掛金の回転日数を差し引いて計算されます。

「2010年度はソニーやパナソニックが約40日だったのに対し、アップルはマイナス20日。「iPhone」や「iPad」は実は製造する20日前には回収を終えていることになる。アップルは製品にこだわるだけではない。商品力を武器に、通信会社などと販売代金を前金で受け取る契約を結ぶ。製造は台湾企業などに委託し、流通段階ではケーブル1本まで、販売情報を常時集めている。開発、製造、調達、流通。さらにはネット上での消費動向を一気通貫で把握し、資金回収を最大化する」(前掲紙)

キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、単純に小さければ小さいほど良いというものではありません。通信会社等との中長期的な関係が重視される場合には、どんなに商品力があっても過度に回収を早めることは関係を悪化させることにもなり兼ねません。また在庫はバッファーであり、タイの洪水のようなリスクに対応するという意味もあるので、全く持たないのが良いというわけではありません。

CCCに限らず、経営指標は全てそうですが、自社の適正値を認識した上で、更なる経営改善に繋げることが必要です。CCCの場合、無駄を排除する経営ツールとして利用されるべきものです。そのためには何が無駄であるのか(必要であるのか)、しっかりと定義される必要があります。

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