半導体3社、事業統合交渉

ルネサスエレクトロニクスと富士通、パナソニックの3社が半導体の主力事業を統合する方向で協議を始めた。家電製品などに組み込むシステムLSI事業を3社が切り出し、官民ファンドの産業革新機構がが出資して半導体設計の専門会社を設立する。革新機構は半導体を受託生産する新会社を合わせて設立し、経営再建中のエルピーダメモリから広島工場を買収する方針だ。
(日本経済新聞2012年2月8日 1面) 

【CFOならこう読む】

こういうリスクの大きい投資を国のカネでやるのはどうかと思います。アメリカであればプライベート・エクイティ・ファンドがこの役割を担っています。

最近ブラックストーンという本を読みました(デビッド・キャリー&ジョン・E・モリス 東洋経済新報社)。

この本は秘密のベールに隠されていたプライベート・エクイティ・ファンドの実態を明らかにしており、必読書といえます。

プライベート・エクイティ・ファンドはレバレッジの利用により、濡れ手で粟のぼろ儲けをしているといったイメージが一般にありますが、この本ではレバレッジの貢献度は著しく低いとした分析結果を紹介しています。

「大手プライベート・エクイティ会社が成長できたのは、過去25年の大半において負債が調達しやすかったためだけではなく、柔軟性があったためである。すなわち好況期には投資先の負債を増やして配当に回すことで投資を回収したり、経営不振の会社の業務改革によって利益を捻出したりする一方、不況期には苦境に陥った会社の債務を売買したり、破産手続きを通じて経営権を握るなど、臨機応変な対応をしてきた。プライベート・エクイティ会社の最大の強みは、その変わり身のはやさであり、その手法は業種や市況に応じて変化する。

相場の変動を利用して儲けることは、企業内のムダを排除したり、研究に出資したり、企業を高付加価値製品の製造にシフトさせたりすることのように、新たな価値を生み出すわけではない。だがそうした行為は、年金基金、大学基金などの投資家に高い投資リターンをもたらしてきた。LBOが企業の価値を損なわないのであれば、プライベート・エクイティによる所有やその特徴である負債比率の高いしほんこうぞうには、上場株式に投資する以上の社会的弊害はないのではないか。

さらに不況期における底値買いにも、資本調達が難しい時期に企業に資金を提供したり、ほかに買い手がいない状況で売り手に流動性を提供するという機能があるーこれも一つの経済的・社会的貢献といえるだろう」(前掲書)

サブプライム後、さすがのプライベート・エクイティ・ファンドも動きを止めていますが、間もなく息を吹きかえし、日本でも活動を再開すると思います。そのときそういった民の活動を官が阻害することがないようにくれぐれもお願いしたいものです。

【リンク】

ブラックストーン
ブラックストーン デビッド・キャリー ジョン・E・モリス 土方奈美 東洋経済新報社 2011-12-09
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