ファンド間転売 高水準

買収ファンドの間で投資先企業を転売する動きが広がっている。2011年はファンドによる日本企業の買収のうち、別のファンドからの転売が50件に達し、買収件数全体に占める割合が過去最高の33%となった。
(日本経済新聞2012年2月9日4面)

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「投資先の発掘に苦戦しているファンドの利害が一致しているようだ。企業価値の向上や産業再編というファンド本来の役割を果たせなくなっている面もある」(前掲紙)

昨日紹介した「ブラックストーン」(東洋経済新報社)にプライベート・エクイティは第二の資本市場ともいうべき役割を果たすようになっていると指摘しています。

「プライベート・エクイティは資本市場の主流派が放棄していた役割を代わりに担った」(前掲書)

そうであるなら、ファンド間の転売も第二の資本市場における売買とみることができるわけで、「ファンド本来の役割を果たせなくなっている」(前掲紙)というのは少し違うように思います。

「買い手の事情はどうか。ユニゾンの林竜也パートナーは「大企業が(非中核部門の)事業売却に動かず、ファンドがその受け皿になる事例が少ない」と不満をもらす。ファンドに投資余力があっても、新たな投資案件を見いだしにくいのが実情だ。」(前掲紙)

この点「ブラックストーン」の訳者あとがきで次のような指摘がなされています。

「日本でも1990年代後半に和製バイアウト専門ファンドが登場し、一定の役割を果たしてきた。だが、日本の経済規模を考えればその存在感はあまりにも小さい。最大の原因は、プライベート・エクイティ業界に人材がいないことでも、ファンド資金が集まらないことでもない。企業の経営陣、もしくはその親会社の経営陣が、他の経営主体に委ねたほうが潜在力を開花させられるような会社を抱え込んで手放さないことだといわれる」(前掲書)

企業側にスピンオフのニーズが薄いのも同じ原因に根ざしており、日本企業のコーポレートガバナンスの脆弱性を示しています。そしてそれこそが、ダイナミックな事業再編を阻害する最大の元凶となっているのです。

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