企業統治強化策に経団連はほとんど反対

日本のコーポレート・ガバナンス(企業統治)への信頼を揺るがしたオリンパス事件も、16日には菊川剛前社長ら旧経営陣3人が金融商品取引法違反などの疑いで逮捕されるに至った。進行中の会社法改正論議にどう響くかが今後の焦点だ。
(日経ヴェリタス2012年2月19日65面)

【CFOならこう読む】

「経団連は1月下旬に主要な提案の多くに反対を表明した。しかし、日本企業への信頼回復に向けてもっと前向きな対応が必要ではないだろうか」(前掲紙)

以下のように法制審議会の中間試案のほとんどに経団連は反対しています。

ワンダフル!!
これぞ経団連です。

「日本経済研究センターのセミナーで講師を務めた早稲田大学商学学術院の中村信男教授は「日本企業のガバナンスに対する信頼が損なわれている現状を考えると、産業界の姿勢はやや問題意識に欠けるのではないか」と話していた。反対を唱える前に、産業界主導でベストプラクティス(最善慣行)を策定し、全員が実践するぐらいのことがあってもいいと主張していた」(前掲紙)

この経団連=産業界という構図がまずいんです。

昨年、経団連を退会した楽天の三木谷さんが日経ビジネスのインタビューに応えて次のように
話しています。

「経団連ね。(電力の)発送電分離に反対という話が出てきて、僕はそれ、本当に不思議だったんですよね。
 奥田さん(トヨタ自動車の奥田碩氏)が会長の時に言われて入りました。当時は小泉純一郎政権下で、経団連が改革の旗手だった。だけど、奥田さんが代わってからどんどん風向きが怪しくなってしまった。今回も早々に原子力に賛成意見を表明した。
「多分経団連ってそういうために作られたんだな」とその時に初めて分かりました。経団連が言っていることが、あたかも経済界の統一見解のように言う。だから僕は「そんなことないよ」と世の中にはっきり言いたかった。違う意見だってあるんだよ、ということですね」
(日経ビジネス2012年2月20日号63頁)

これはその通りで、我々の周辺でも、例えば税法の立法過程で、経団連が産業界代表として意見を述べ、財務省と折衝する役割を担っているのです。若い企業家は、経団連が自分達の代表とは露とも思わないはずです。にも関わらず経団連は確信犯的に産業界代表の役割を演じ、役所は経団連と折衝した形をとることで、産業界の意向を踏んで立法化しているという体裁を整えることができるので、これを利用している側面もあるのです。

しかし、産業界の意向というのは民主的に示されるべきです。テクノロジーの進化は、それを低コストで可能にしています。三木谷さんには単に経団連を辞めるだけでなく、経団連に代わって政府に対し、ほんとうの産業界の声を伝える役割を担ってもらいたいと思います。その前提としてすべての企業家が産業界代表の意識を持って、ツイッターなりで声をあげることが必要だと思います。今日取り上げた企業統治改革についても、経団連とは全然違う意見があることでしょう。

【リンク】

「会社法制の見直しに関する中間試案 平成23年12月」法務省民事局参事官室 [PDF]

2012年1月24日「『会社法制の見直しに関する中間試案』に対する意見」(社)日本経済団体連合会」