シンガポールの企業誘致に邁進

昨秋、シンガポールの高級ホテルで開いた日系石油化学会社の工場新設パーティー。慣れない法被を着せられ、鏡開きで飛び散った日本酒でずぶぬれになりながらも同国経済開発庁(EDB)のレオ・イップ会長は訴えた。「我が国はみなさんの発展に全力で貢献してまいります。
EDBは政府系投資会社テマセク・ホールディングスと並ぶ都市国家シンガポール独特の戦略官庁。日中印欧米の主要都市に拠点を展開し、外資誘致に邁進する。欧州危機による混乱にもかかわらず、昨年のシンガポールへの直接投資は過去最高水準の137億シンガポールドル(約9千億円)に達した。
(日本経済新聞2012年3月18日13面)

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日本の場合には、まずは日本企業が日本にとどまってもらうようにすること、次に起業を促進すること、その後に外資誘致という順番だとは思いますが、それにしてもシンガポールとの企業誘致競争に晒されているいう現実に変わりはありません。

「EDBが企業誘致するうえで武器とするのが税制だ。法人税の最高税率は17%と世界屈指の低水準だが、実は進出企業の税負担はさらに軽い。技術移転の有無や提供する雇用や賃金の中身に応じて税金を割り引く」(前掲紙)

税制に限らず、企業誘致に邁進するシンガポール政府と比較すると、日本政府の対応は全く物足りない。

「ここだと中国とかインドとか世界経済の動向が分かるんだ」。港を見下ろす59階の新オフィスでHOYAの鈴木洋最高経営責任者は話す。今年から東京本社はそのままに家族を伴い執務拠点を移した。震災をきっかけに代表的な高付加価値製品であるマスクブランクス(半導体回路原版)の生産拠点も年内に操業する。シンガポールが最も好むタイプの投資だ」(前掲紙)

今のままでは、優良な日本企業がどんどん日本を出ていくことになります。政府は大きな危機感をもって事に臨む必要があります。

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