商社の海外IR

世界的に珍しいとされる総合商社のビジネスモデルや将来像を分析したリポート「総合商社原論」を、日本貿易会がまとめた。総合商社は2012年3月期の予想純利益ランキングで上位10社に4社入るなど業績好調だが、株式市場での評価はなかなか高まらない。商社の強みや今後の方向性、海外IRの課題などについて、リポートのとりまとめを指示したう槍田松瑩会長(三井物産会長)に聞いた。
(日経ヴェリタス2012年3月18日20面)

【CFOならこう読む】

-配当や株主還元をどのように充実させていきますか。

三井物産の社長時代、欧米企業の例を調べて、急成長が見込めない会社は配当還元率が高いことが分かった。それならばということで、配当性向を20%に引き上げました。今の飯島社長は25%位にしており、以前より株主還元の充実の方向にカジを切っています。確かに商社は、これから急成長する感じじゃないから、そういう流れになってきたのは間違いないですね」(前掲紙)

急成長が見込めないから、配当還元率を上げるというより、NPVがプラスな投資ニーズがないため、投資機会に乏しく、余剰キャッシュが生まれるから、このキャッシュは、配当か自社株買いに回す、ということです。

「商社のように多様な収益源で成長を担うような業態は、投資の効率性を求める海外の投資家からは敬遠されがち。PER(株価収益率)が高まらない要因のひとつといわれる」
(前掲紙)

確かにファイナンス的には、ポートフォリオは投資家が考えるから、企業は、コア事業に特化すれば良いとよくいわれますが、商社の事業ポートフォリオを機関投資家が簡単に再構築できるとは思えません。リスク分散に長け、安定配当を長期的に継続できるのであれば、それはそれで貴重な銘柄だと思うのです。ウォーレン・バフェットが言うように、株価が上がる銘柄だけが良い銘柄というわかでもない(2012年3月5日「自社株買いの意義 − バフェットの手紙より」)ので、この辺を海外IRで強調すればよいのではないでしょうか。

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