Say-on-pay

世界の主要企業が株主総会の季節を迎え、高額報酬や議決権行使のあり方などコーポレートガバナンスに改めて関心が集まっている。ガバナンスの潮流や海外投資家の日本企業の見方について、国際コーポレート・ガバナンス・ネットワークの事務局トップ、カール・ローゼン氏に聞いた。
(日本経済新聞2012年4月19日6面)

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「一般従業員の300倍以上の高額報酬は持続しえない。この25年間で、欧米企業のコストのうち、唯一増えたのが役員報酬だ。経営者の候補は人材市場にいくらでもいるのに、需給を無視して報酬が膨らんだのは、米国で株主の権利が弱かったためだ。

米国では2010年、役員報酬が株主総会の決議事項になった。否決しても強制力はないが、報酬の適正化を本格的に迫る圧力になる。銀行のガバナンス強化が新たな金融危機を防ぐカギだ。」(前掲紙)

日本では役員報酬の上限の改訂や、退職慰労金が株主総会の決議事項になっていますが、米国では報酬を経営判断の領域とされており、株主がその是非について判断する機会は限られていました。

しかしオバマ政権化で成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)の一環として役員報酬を株主総会に諮るSay-on-payが上場会社に義務づけられ、昨年1月以降の株主総会から適用されています。

Say-on-Payとは、株主が役員の報酬について賛否を投票することを言い、自社の役員報酬について株主の意見を直接に問う仕組みです。ただし、株主総会に諮るとはいっても、Say-on-payは、法的拘束力のない、Non-bindingvoting(非拘束的決議)であり、参考意見として株主の意向を調査するといった位置付けです。しかし、役員の報酬の内容が否決されれば、株主や世間から注目を集めることになり、その結果、次の報酬委員会のメンバー選定などにも影響を与えることになることから、Say-on-payは単なる参考意見にとどまらない、実際的な抑制力があると考えられています。

折しも17日に開催された米シティグループが17日に開催した年次株主総会で、役員報酬案が否決されました。

「シティは「(事態を)深刻に受け止めている」としており、報酬の見直しが検討される可能性がある」(日本経済新聞夕刊2012年4月18日3面)

今後日本企業はグローバル化の一環として、外国人経営者を迎え入れる必要性が増していくものと思われます。その場合に役員報酬は海外の市場価格を斟酌せざるを得ず、株主総会で決議される役員報酬の上限が壁となって、優秀な経営者にオファーすら出すことができないという事態も想定されます。

日本も役員報酬の開示を充実させた上で、Say-on-payに切り替えることを検討して良いように思います。

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