退職給付会計、2014年3月期から新基準

日本の会計基準づくりを担う企業会計基準委員会(ASBJ)は17日、年金の積み立て不足を貸借対照表に反映させることを柱とした新しい退職給付会計の基準を正式発表した。2014年3月期の連結決算から適用する。新基準は年金資産の配分など運用状況の詳細な開示を求めており、年金財政の透明性を高める。
(日本経済新聞2012年5月18日15面)

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「年金の積み立て不足は現在、企業が10年程度の期間で毎年分割して費用処理しており、総額は有価証券報告書に注記として開示している。新基準ではこれまでと同様の費用処理に加えて、積み立て不足を全額負債に即時に計上し、一方で自己資本を減額して貸借対照表に反映させる」
(前掲紙)

他注記事項も拡充されます。新会計基準が要求する注記は以下の通りです。

確定給付制度に係る次の事項について連結財務諸表及び個別財務諸表において注記 する。なお、(2)から(11)について、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。

(1) 退職給付の会計処理基準に関する事項
(2) 企業の採用する退職給付制度の概要
(3) 退職給付債務の期首残高と期末残高の調整表
(4) 年金資産の期首残高と期末残高の調整表
(5) 退職給付債務及び年金資産と貸借対照表に計上された退職給付に係る負債及び資産の調整表
(6) 退職給付に関連する損益
(7) その他の包括利益に計上された数理計算上の差異及び過去勤務費用の内訳
(8) 貸借対照表のその他の包括利益累計額に計上された未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の内訳
(9) 年金資産に関する事項(年金資産の主な内訳を含む。)
(10) 数理計算上の計算基礎に関する事項
(11) その他の退職給付に関する事項

なお、新実務指針30項は、

「各事業年度において割引率を再検討し、その結果、少なくとも、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直し、退職給付債務を再計算する必要がある」

としています。

そして重要な影響の有無の判断に当たり、

「前期末に用いた割引率により算定した場合の 退職給付債務と比較して、期末の割引率により計算した退職給付債務が 10%以上変動すると推定されるときには、重要な影響を及ぼすものとして期末の割引率を用いて退職給 付債務を再計算しなければならない」

としており、基本的な考え方に変更はありませんが、旧実務指針では、期末において割引率の変更を必要としない範囲について、【資料3】期末において割引率の変更を必要としない範囲、が参考となるとされていましたが、新実務指針ではこれが引き継がれていません(新実務指針72項)。

また、旧実務指針【資料4】平均残存勤務期間の計算例、も引き継がれていません(新実務指針72項)。

【リンク】

2012年5月17日「企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」の公表」企業会計基準委員会