年金課税改革提案ー田近栄治一橋大学教授
・所得税は所得控除縮小し税率を極力一律に
・消費税の逆進性を巡る技術論に終始するな
・社会保障財源には消費税を充てるのが適切
(日本経済新聞2012年6月7日26面 経済教室)

【CFOならこう読む】

「さらに、年金課税についても現実的な改革提案が求められる。年金保険料は、現役時代に保険料を拠出した時点で控除されているので、それとのバランスをとるには、年金を受け取った時点で課税することが必要である。しかし、現実には公的年金等控除があり、多くの人々にとって年金は実質非課税所得となっている」(前掲紙)

公的年金の保険料については、全額を「社会保険料控除」として、課税される所得から差し引くことができます。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1130.htm

これは単に拠出金額が所得控除されるというだけでなく、実質的に年金については課税が免除されることを意味します。

この点マイロン・ショールズ他の「タックス・アンド・ビジネス・ストラテジー」(邦題「MBA税務工学入門」中央経済社)は、次のように説明しています。

「年金基金に拠出された$1は、n年後には$(1+R)nとなるが、年金支払時に、この投資収益累計額の全額に対して税率tで課税されるとした場合、税引後の手取り額は$(1+R)(1-t)となる。年金基金に対する当初の投資額は($1)は、税効果(税引)後で考えた場合、(拠出時に投資支出額が全額損金算入されているために)$(1-t)で済むことから、税引後投資支出額に対する税引後投資収益率は、次のように計算される。

{1/(1 -t )}(1 +R ) (1 -t ) = (1 +R ) n

但し、

R=税引前運用利回り
n =期間
t =通常税率」

税引後投資収益率からtが消えてなくなっています。

つまり、この数式は、年金受給時にその受給金額について、拠出時と同じ税率tで課税されたとしても、実質的に非課税で運用されていることを意味しているのです。

年金受給時に課税があっても実質非課税なのに、年金受給時に課税がないのであれば、税引後投資収益率は、

{1/(1 -t )}(1 +R ) n

となります。

これは課税がないだけでなく、国庫から補助を受けて運用できていることを意味しています。
(例えば、tに0.2を入れると、上の式は1.25(1 +R ) nになります)

「今後、年金受給者が増大する中で、こうした年金課税は是正すべきであろう。公的年金の負担を現役世代だけでなく、高齢者も担うという観点からも重要だ」(前掲紙)

まさに正論です。

【リンク】

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