間違いだらけのスタートアップ・ファイナンス − 本荘修二氏

今回はスタートアップの資金調達について考えてみたい。最近の傾向として、小額な資金のみで贅肉のないスリムな財布でスタートする「リーン・モデル」が主流となっている。とはいえ、事業を始めるには、いくばくかの資金がなければならないし、成長のためにも資金調達は不可欠だ。
ダイヤモンドONLINE「しっかりしろ起業家たちよ 日本の間違いだらけスタートアップ・ファイナンス」

【CFOならこう読む】

スタートアップ時点でのファイナンスの過ちは致命的になりかねないことを、本庄氏は次のように指摘しています。

「スタートアップ先進国の米国でも、間違ったスタートアップ・ファイナンスはある。しかし、日本のそれは特に問題だ。

「新規の投資家として増資を引き受けて欲しいとあるスタートアップ企業に言われたので、その企業の話を聞くと、シード段階で30~40%も他の投資家に株を持たれていた。そんな状況では、もはや資本政策の組みようがないから、我々にとっては増資を引き受けるかの検討にすらのぼらない」

 日本のスタートアップの資本政策の“マズさ”を指して複数のベンチャー・キャピタリストはため息をついている。実際に、日本のスタートアップが、初期段階での資本政策の過ちで、次の資金調達がおぼつかなくなったり、経営陣が会社のコントロールを失ったりする例が、あちこちで見られる。」(同上)

私も実際にこのような事例を多く見聞きしており、本庄氏の指摘は全くもって正しいと思います。

しかし、スタートアップ時点では資金に乏しく、ポンとまとまったカネを出してくれる投資家に頼りたくなる企業家の気持ちもわかります。

それではどうすれば良いでしょう。

企業家は、外部の投資家の言いなりになるのではなく主体的に資本政策にも取り組めば良いのです。

そのためには、IPOを一つの通過点とするような会社の長期的な事業計画と、それに基づく資金計画を立てる必要があります。

来年のこともわからないのに長期の事業計画なんか立てられるか、そんな声が聞こえてきそうです。しかしそんなことを言っている時点で企業家としての資質は疑わしい。

昨日のカンブリア宮殿は、Amazonのジェフ・ペゾスを取り上げていました。番組の中で、ペゾスの10年、20年先を見通す才能について語られていましたが、私はそれこそが優れた企業家に共通した資質であると思っています。

長期の事業計画が立てられないのなら、その時点でそんな事業は止めるべきです。

信念に基づく長期的な事業計画と資金計画を作り、それに基づき長期の資金調達計画を立てるのです。こういう作業を企業家自身の手で行えば、スタートアップ時に付け焼刃的なファイナンスを行う愚も回避できるはずです。

さらに言うなら、IPOも一つの通過点に過ぎないので、IPO時が株価の頂点といったような一般投資家を愚弄するIPOも避けられるはずです。

コンサルタントその他の専門家の力が必要な場面はありますが、企業家自身が自らの頭で考え、あくまで主体的に外部の専門家を”使う”姿勢が大切です。

ファイナンスなんてわからない、多くの企業家はそう思うかも知れませんが、自分が行う事業を一番よくわかっているのは企業家自身です。ファイナンスは事業の延長線上にあるのですから、わからないなどと言うことは決してありません。

本庄氏が「KA(こいつらアホか)と表現している企業家は、要するに考えることを放棄した怠慢な企業家のことなのです。

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