北越紀州、大王製紙の筆頭株主に ー 続き

製紙業界5位の北越紀州製紙が4位の大王製紙の株式約2割を同社の創業家から取得し、筆頭株主になる方針を固めた。王子製紙、日本製紙グループ本社に次ぐ3位の企業連合誕生は、新たな業界再編のきっかけになりそうだ。
(日本経済新聞2012年6月21日9面)

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「2006年、王子が当時の北越製紙に敵対的TOBをかけた際、大王が北越の株式を一部取得するなど阻止に協力した。北越紀州の岸本哲夫社長は「大王に恩義を感じる」と明かす。今回、創業家との関係悪化で分裂状態になっていた大王に手をさしのべたとの見方がある。」(前掲紙)

2006年の王子による北越は日本で初めての敵対的TOBでした。北越経営陣と王子は株主に向けて互いに価値創造プランを示し、最終的に株主が経営をどちらに委ねるかを決する、そんなTOBが本来予定している経営支配権移動のメカニズムを現実に機能させる絶好のチャンスでした。しかし結果としては、価値創造プランのコンテストは行われませんでした。

北越製紙経営陣が、三菱商事、日本製紙、大王製紙を見方につけ、遮二無二買収防衛阻止に向かったからです。もちろん北越経営陣からこのような説明はありません。しかし「恩義を感じる」という岸本社長の言葉が事実を雄弁に物語っています。

結果、北越経営陣は買収防衛に成功したものの、それは誰にとっての成功であったのか?

国際競争力の強化が何より重要な日本の製紙業界において、自分のムラを守ることに全身全霊を傾けることに一体どれだけの意味があるのか?

2006年の敵対的TOBから5年以上の時間が経過し、両陣営から多少なりとも反省の弁が聞こえても良いように思うのですが、どこからもそんな声が聞こえてこないのが何とも淋しい。

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