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全日空(ANA)増資、財務強化に照準

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ANAが7月下旬、最大2100億円規模の公募増資に踏み切る。成長分野と位置づける国際線事業の拡大に向け、米ボーイングの次世代旅客機「787」の導入資金などにあてる。9月にはJALが再上場する予定で、株式市場でも航空2強が火花を散らすこと
になる。
(日経ヴェリタス2012年7月8日14面)

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増資の一報が伝わった3日午後には、一時株価は前日比16%安の189円まで急落しました。明確な成長戦略を示せていないことから、増資の必要性について疑問視する声が市場から聞こえてきます。

ANAは資金使途について次のように説明しています。

「日本の航空業界を取り巻く環境は、羽田空港や成田空港をはじめとした首都圏空港容量の拡大や 航空自由化の更なる進展、LCCの相次ぐ就航等、大きな転換期を迎えています。
このような環境下において「アジアを代表するエアライングループを目指す」という経営ビジョ ンの達成に向け、本年2月に 2012-13 年度ANAグループ経営戦略を策定し、さらに今後のグルー プ経営体制として競争を勝ち抜くことが出来る経営基盤の構築を目的に持株会社制への移行(2013 年4月)を決定しました。
この新たなステージである持株会社体制では、ANAブランドとLCCブランドとのマルチブラ ンド戦略に対応する最適な組織体制として、「経営」と「執行」の分離と、グループ経営の強化お よび各事業会社の自律的経営による効率経営の実現を図って参ります。加えて、成長著しいアジア を主力市場とする航空会社として、日本のみならず「アジアをベースにしたマルチブランド化」を 目指して、積極的なアジア域内での事業展開を加速し、将来に向けあらゆる成長戦略を機動的に実 行して参ります。今般の公募増資では、今後の事業ポートフォリオ拡張の中で、とりわけ成長分野 である国際線旅客事業のネットワーク競争力に重要な、最新鋭機材ボーイング 787 型機を中心とす る経済効率の高い戦略的機材への投資促進を図ると共に、アジアをベースにしたマルチブランド戦 略の確立を目指して、将来の成長機会に適時かつ機動的に対応できるような財務基盤を確立いたし ます。
今後も当社グループは「2012-13 年度ANAグループ経営戦略」を着実に推進し、「大競争時代 を勝ち抜き、常にお客様に選ばれ続けるエアライングループ」として航空運送事業を中心とした高品質なサービス提供の維持・向上に努めてまいります。」
2012年7月3日「新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ」 全日本空輸株式会社   [PDF]

しかし記事にあるように「787 」の投資額は、営業キャッシュフローの範囲で賄うことが可能です。

「「787」などの投資総額は約8300億円に上り、発注時の前払い金などを除くと設備投資は年2000億円程度になる。一方、ANAの2013年3月期の連結営業利益は前期比13%増の1100億円と、2年連続で過去最高を更新する見通し。営業キャッシュフローは安定して2000億円超を稼ぎ出しており、本業のもうけで資金を賄うことは可能だ。」
(前掲紙)

それでも増資に踏み切ったのは、再生JALに比し自己資本比率が見劣りするというのが一つの理由です。今期末のJALの自己資本比率は40%を超える見通しであるのに対し、ANAは30%を下回る水準です。そしてもう1つの理由は、格安航空会社(LCC)の台頭で運賃引き下げ競争に拍車がかかり、今後経営環境が大きく悪化していくのに備え、今のうちに資金を手当てしようというものです。

いずれも増資の理由としては、まっとうであると思います。しかしそれでも調達した資金を寝かせておくということでは株価が下落します。このタイミングで明確な中長期のビジョンを顧客や市場に対し示すことが不可欠だと思います。

【リンク】

2012年7月3日「新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ」 全日本空輸株式会社   [PDF]

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