優先株式発行で債務超過解消 – 石井表記

石井表記は12日、第三者割当増資による優先株発行で16億5千万円を調達すると発表した。これにより太陽電池向けシリコンウエハー事業撤退に伴い2012年1月期に発生した21億3900万円の債務超過を解消する。
(日本経済新聞2012年7月13日13面)

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石井表記の優先株式の概要は次の通りです。

A種優先株式の概要
① 払込期日 平成24年8月31日
② 発行新株式数 75,922株
③ 発行価額 1株につき金10,000円
④ 調達資金の額 759,220,000円
⑤募集又は割当方法( 割当予定先)
 第三者割当の方法により、三菱UFJリース株式会社に75,922株を割り当てる。
⑥ その他
 上記各号については、平成24年8月30日開催予定の臨時株主総会において、第三者割当に関する議案の特別決議を得ることとしている。また、A種優先株式の発行に必要な定款変更案の承認を得ることを本件優先株式発行の効力発生条件としている。

B種優先株式の概要
① 払込期日 平成24年8月31日
② 発行新株式数 90,000株
③ 発行価額 1株につき金10,000円
④ 調達資金の額 900,000,000円
⑤募集又は割当方法( 割当予定先)
 第三者割当の方法により、、株式会社もみじ銀行に対して85,000株、株式会社広島銀行に対して5,000株を、それぞれ割り当てる。
⑥ その他
 上記各号については、平成24年8月30日開催予定の臨時株主総会において、第三者割当に関する議案の特別決議を得ることとしている。また、B種優先株式の発行に必要な定款変更案の承認を得ることを本件優先株式発行の効力発生条件としている。

募集の目的及び理由
石井表記は、前連結会計年度で、太陽電池ウェーハ事業の大幅な縮小に伴う多額の当期純損失を計上したことにより債務超過となっており、石井表記グループには継続企業の前提に関する重要な疑義が存在している。当該状況下、平成25年1月期における債務超過を回避し株式上場を維持するとともに、財務体質の抜本的な改善を図るため、取引先金融機関の一部に対して株式発行を行い、調達資金を原資として有利子負債を圧縮すると同時に十分な運転資金を確保するために、三菱UFJリース、もみじ銀行、及び広島銀行に対して、第三者割当の方法により、それぞれA種優先株式及びB種優先株式を発行することとした。」

資金使途
A種優先株式は、割当先である三菱UFJリースから調達した資金を原資として、同社に対する引取保証債務を圧縮することを目的としている。B種優先株式の発行により調達した資金は、リース債務の一部返済資金に、及び将来にわたり石井表記の事業の継続性を確保する目的で運転資金に充てられる。
(「第三者割当による優先株式の発行、定款の一部変更、並びに資本金及び資本準備金の額の減少に関するお知らせ」より抜粋
 http://www.ishiihyoki.co.jp/IR/news.html

いわゆる「企業救済型の優先株式発行」です。日本の上場会社によって発行される優先株式の多くはこのタイプですが、優先株式は企業が資金繰りに窮したような状況でない場合であっても、企業の資本政策に合わせ、もっと柔軟に活用されて良いと思われます。

なお、普通株式のほかに優先株式を発行している未上場のベンチャー企業においては、ストックオプション税制上不適 格とみなされる可能性を恐れ、直前発行優先株式の価格を権利行使価額とし、十分な インセンティブが付与できていない状況にあり、ベンチャー企業においても優先株式の利用はあまり進んでいませんでした。

しかし、経済産業省のウェブサイト(「ストックオプション税制のご案内」経済産業省)において、普通株式のほかに種類株式を発行している未上場会社 が、新たに普通株式を対象とするストックオプションを付与する場合、必ずしも直前の種類株式の発行 価額が権利行使価額の基となる普通株式の価格に該当する訳ではないことが明らかにされており、今後ベンチャー企業においては優先株式を含む種類株式の利用が進むことが期待されます。

【リンク】

株式会社石井表記 ニュースリリース