会社法改正の要綱原案

法制審議会の会社法制部会は18日の会合で、会社法改正の要綱原案を示した。上場企業などに外部からのチェック機能を強めるための社外取締役設置の義務づけは見送る一方で、置かない場合は理由を開示するよう求めた。
(日本経済新聞2012年7月19日3面)

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会社法の改正に関する要綱原案の主なポイントは以下の通りです。

・大企業への社外取締役設置の義務化見送り
・「監査・監督委員会」制度の導入
監査役会に代わり、社外取締役が過半数を占める「監査・監督委員会」を選択できる制度
・親会社の株主による子会社の監視強化
親会社の株主が子会社の取締役の責任を追及できるようにする
・第三者割当増資の規制
議決権の半数を超える第三者割当増資について、持株比率10%以上の株主が反対する場合は、株主総会の承認を得る。

最後の第三者割当増資の規制ですが、昨年12月に公表された「会社法制の見直しに関する中間試案」では次のような提案が行われていました。

「公開会社が,ある引受人(当該公開会社の親会社等を除く。)に募集株 式を割り当てることにより,当該引受人が総株主の議決権の過半数を有 することとなるような第三者割当てによる募集株式の発行等を行う場合 に,株主総会の決議を要するものとするかどうかについては,次のいず れかの案によるものとする。
【A案】 原則として株主総会の普通決議を要するものとする。ただし, 取締役会が当該募集株式の発行等による資金調達の必要性,緊 急性等を勘案して特に必要と認めるときは,株主総会の決議を 省略することができる旨を定款で定めることができるものとし, そのように定めた場合には,総株主の議決権の100分の3以 上の議決権を有する株主が一定期間内に異議を述べない限り, 当該定款の定めに基づく株主総会の決議の省略が認められるも のとする。
【B案】 総株主の議決権の4分の1を超える数の議決権を有する株主 が一定期間内に当該募集株式の発行等に反対する旨を通知した 場合には,株主総会の普通決議を要するものとする。
【C案】 現行法の規律を見直さないものとする。
(注1) A案又はB案によることとする場合に,当該引受人が総株主の議決権の3分の1を超える数の議決権を有することとなるような第三者割当てによ る募集株式の発行等にまで規律の対象を広げるかどうかについては,なお 検討する。
(注2) 第三者割当てによる募集新株予約権の発行等の取扱いについては,なお 検討する。」

要綱原案は、閾値を4分の1から10%に下げた上で【B案】を採用したということです。
この規制があれば、コジマのビックカメラ傘下入りは実現しなかったかもしれません(12%の持分比率を有する小島会長はビックカメラ傘下入りに反対していた)。

しかしこの規制が実現したとしても、少数株主の保護という観点からの問題は依然残ります。

欧州では、支配権が移転するような一定の議決権割合(英独は30%以上、仏は3分の1超)に達する株式を取得した場合その取得自体は、TOB規制の対象とはなりませんが、その代わり、取得後に他のすべての株式を対象にしたTOBを行わなければなりません。取得には市場内外・新株発行すべてが含まれます。そしてその全部勧誘・全部買付のTOB価格は、過去一定期間(英仏は1年間、独は6ヵ月間)における最高取引価格以上でなければならない、との規制があります(三井秀範金融庁総務課長「欧州型の公開買付制度」商事法務No.1910(2010))。

日本でも欧州型のTOB規制の採用を検討すべきであると思います。

【リンク】

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