株主優待、導入比率が最高

株主配分の一環として自社製品や買い物券などを 提供する「株主優待制度」を実施する企業が 広がっている。導入社数は2年連続で増え、上場 企業全体(約3700社)に占める比率は過去最高 の27.8%になった。
(日本経済新聞2012年9月14日15面)

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「株式市場の低迷が長引くなか、増配や自社株買 いに加えて株主配分を強化し、個人投資家の 株式長期保有を促す狙いがある」(前掲紙)

株主優待制度導入には、検討すべき点がいくつも あります。

まず第1に、外国人株主や、年金基金や生命保険 を通じて株式を買っている個人投資家等、株主優 待 の恩恵を受けることができない株主が存在するこ とが株主平等原則の観点から問題がないか、とい う 点です。

この点について、例えば次のような批判があるこ とを知っておく必要があります。

「株主優待は、権利を行使できない株主にものす ごく不利な制度だ。だから欧米市場はもちろん、 外国人株主比率の高い新興国でも株主優待はあり 得ない。」
(「橘玲の不思議の国」探検 日経ヴェリタス 2010年2月14日70面)

第2に、現物配当との区別が明確に出来ない点で す。

この点、新会社法実務相談(西村ときわ法律事務 所編 商事法務)は次のように説明しています。

「現行の一般的な株主優待制度は、現物配当制度 とは別個のものとして認められるという理解が有 力であり、また株主優待制度は、多くの場合、個 人株主作りや自社商品・サービス等の宣伝を目的 として小額のものを分配するに過ぎず、株主に対 する配当の性格は認められないのではないかと思 われます。もっともかかる合理的な目的に相当な 範囲を超えて、株主優待制度の下に多額の会社財 産を払い戻す行為は実質的な現物配当として、会 社法453条以下の配当規制に服することなくこれ を行うことは許されないものと思われます。」

株主優待の中には、小額のものを分配するに過ぎ ない、とは言えない場合が散見され、十分な検討 が求められます。

第3に会計処理です。 一般に、株主優待を付与している時点で、株主優 待引当金を計上する必要がある場合があります。 自社の商品・サービスを購入できる無料券や割引 券を付与する場合には、付与時点で引当計上する 必要があると 思われます。

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