【 M&A箴言集 】キヤノン 田中稔三副社長

ー世界景気の先行きは不透明になるなかで、手元 資金の使い道をどう考えていますか。 「世界の景気動向に関係なく、最も重要なのは成 長力の維持だ。新しい事業として医療や 安心・安全の分野、産業用ロボットに注力してい る。次は株主還元。当社はリーマン・ ショック以降、1度も減配していない」(前掲紙) (日経ヴェリタス2012年10月24日3面)

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「 ー 医療機器の分野ではM&Aに意欲を示してきま したが、なかなか案件が出てきません。 「キヤノンの独自技術が生かせる分野に出たいと 考えている。ただ、グローバル企業で 企業間の技術格差が縮まっているので、そうした 分野を見つけるのは難しくなっている。 買収対象として魅力的な企業が出てきたとして も、他の会社も目を付けているので、 買収価格がどんどんつり上がってしまう。当社は 買収を提案する前に、相乗効果などを 入念に計算するので、実際に交渉に入るまでの ハードルが高い」 (前掲紙)

経営者としては、欲しいと思った企業はいくら 払っても手に入れたいと思うものです。 そう言う意味では、事前に価格の上限を定めてお くことは非常に重要だと思います。

このインタビュー記事のなかで、田中副社長は、 「必要以上にキャッシュを寝かして おくのは、もったいない。余剰分は、資金効率を 改善するのに自社株買いに使うのが 良い」とも話しています。

この”もったいない”という言葉は、株主からの視 点がないと出てこない言葉です。

交渉前に買収価格の上限を定めている点もそうで すが、株主価値創造という基軸が、 意思決定のプロセスにきちんと組み込まれているように感じます。

日本ではまだまだ稀有な存在ですが、上場会社は かくあるべき、と私は思います。

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