大手百貨店の負ののれん

大手百貨店の2009年度連結業績で、経営統合により発生した「負ののれん代」の償却額が注目されている。負ののれん代償却額は、三越伊勢丹ホールディングスの2010年3月期が132億円、J・フロントリテイリングの10年2月期は23億円の見込み、百貨店販売が極度の不振に陥る中、業績の下支え効果は大きい。ただ、株価はそうした特殊要因を認識しているとは言い切れず、割高に評価されている可能性がある。投資家は注意が必要だ。
負ののれん代は被買収企業の時価評価した純資産が買収額を上回るケースに、買収した企業が貸借対照表に計上する。定期償却すると利益押し上げ要因になる。高島屋やエイチ・ツー・オーリテイリングのように負ののれん代の償却がない企業もあり、表面上の利益の変動要因となっている。

(日経ヴェリタス2009年6月7日14面)

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日経ヴェリタス 2009年6月7日 14面

「負ののれん」は平成22年4月1日より、会計基準が変更になり、「原則として、特別利益に計上する」(企業会計基準第48項)ことになります。

「負ののれん」は、PBR(株価/1株当たり純資産額)が1を下回る会社を買収する場合発生します。

このPBR1倍以下という状態は、その会社のオンバランスの資産のNPV(正味現在価値)がマイナスであると株式市場は評価している場合、または株価そのものが間違っている場合に生じます。

百貨店の場合は、将来キャッシュフローに見合わない過剰資産を抱えているケースが多く、本来的には貸借対照表の資産価値が過大に評価されている可能性が高いでしょう。

そう考えると、中長期的に減損損失なり資産処分によりロスが会計上も実現していくことになります。とすると、負ののれんは引当金のようなもので、将来のロスの発生とともに取り崩していくべきもので、定期償却が理論的と言えます。

また株価が間違っている場合にも、買入価格を買収の原価とすべきで、一括償却するという会計処理は、100円の価値がある資産を50円で購入した場合、資産価格を100円とした上で、50円の利益を計上するようなもので、正しい会計処理とは思えません(50円の利益は将来キャッシュフローの中で実現していくものです)。

いずれにしても「負ののれん」は定期償却すべきものと私は考えます。

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