日立の厳格な投資基準

2003年に米IBMから約20億ドルで買収したハードディスク駆動装置(HDD)事業はその後、5年連続で営業赤字だった。「事業部門は後のことを考えずに買収を提案する。お金は本社任せという体制だった」。財務担当副社長の中村豊明は振り返る。
(日本経済新聞2012年10月26日11面)

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「2009年のカンパニー制導入を機に投資の仕組みを抜本的に見直した。カンパニー単位で貸借対照表やキャッシュフロー計算書を整備。カンパニーの財務内容で「社内格付け」を決めている。2011年度の営業利益が約1000億円の情報・通信システム社の場合、社内格付けで認められる投資の上限は500億円程度とみられる。その是非も経営会議や取締役会で厳しいチェックを受ける」(前掲紙)

こうした身の丈経営の結果、カンパニーごとの採算は改善したものの、副作用としてリスクを取ることを怖がるようになって、なかなか大型のM&Aが実行されないようになったと、中村副社長は分析しています。

投資の上限を決め、取締役会等における厳しいチェックを受ける、というプロセスは確かに必要です。

ですが、投資(M&Aも含む)の評価は、資本コストとの関係、すなわちリスクとの関連で行われるべきです(EVAやNPV)。その上で、大きなリターンを獲得したなら、大きな報酬が支払われる、といったインセンティブプランも合わせて導入する必要があると思います。

格付け、といったDebt的なメンタリティーを前面に出すだけでは、なかなか果敢にリスクを取ることが奨励されるような企業文化は育たないように思います。

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