資産除去債務

将来必要な工場の撤去費用などを財務諸表に反映する会計基準が2011年3月期から義務付けられる。アスベストなど法令や契約に基づく有害物質の処理や賃貸不動産の原状回復費用に伴う費用が対象で「資産除去債務」と呼ぶ。貸借対照表と損益計算書が大きく変わる可能性もある。早期適用する企業も出始めた。
(日本経済新聞2009年6月10日14面)

【CFOならこう読む】

「日鉄鉱業2009年3月期決算で貸借対照表の負債の部に約30億円の資産除去債務を計上した。約40年後に閉鎖する鉱山など11カ所の撤退費用を国債の利率で現在価値に割り戻し、金額を算出。資産除去債務に伴う費用は減価償却費などとして損失処理することになる。
導入初年度の前期は、売上原価で約7千万円、特別損失で約24億円を計上した。特損は鉱山などが稼働した時から2008年3月期までの過年度分の減価償却費に当たる。」
(前掲紙)

適用初年度の会計処理がどうなるかですが、適用初年度における資産除去債務の金を負債計上し、資産除去債務を発生時点で計算した金額からその後の減価償却費相当額を控除した金額を資産計上し、その差額は適用初年度に特別損失として処理されます(資産除去債務に関する会計基準)。

多くの企業にとって気になるのは、賃貸不動産の原状回復費用の取扱いでしょう。
これについては、「敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積もり、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる(資産・負債の両建計上ではなく)」とされています(資産除去債務に関する会計基準の適用指針9項)。

その場合の償却年数ですが、「会社の同種の賃借建物等への平均的な入居期間で費用配分する」((資産除去債務に関する会計基準の適用指針[説例6])ことになります。

【リンク】

平成21年5月8日「平成21年3月期 決算短信」日鉄鉱業株式会社[PDF]