富士通、英国子会社の企業年金に1000億円拠出

富士通は英国子会社の企業年金に1000億円規模で資金を拠出する。同子会社は多額の積立不足を抱えており、運用の元手になる資産を増やして運用改善を狙う。
(日本経済新聞2012年11月22日2面)

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「富士通は2013年3月期中に、英国子会社、富士通サービスの年金に資金を拠出する。1999年に買収した名門コンピュターメーカーのICLが母体で、歴史が長く年金負担のも重かった。前期末で約1000億円にのぼる海外子会社全体の不足額の大半は英子会社が占めるもよう。海外分は富士通全体の不足額の4分の1を占める。」(前掲紙)

2012年3月期現在、富士通の海外子会社の未認識数理計算上の差異は1,089億円となっています
(国内は3,575億円)。

国内では「退職給付に関する会計基準」の改訂により、2014年3月期より、数理計算上の差異及び過去勤務費用は、連結貸借対照表の純資産の部において税効果を調整した上で認識し、積立状況を示す額を負債(又は資産)として計上されることになります。

一方海外においては、IAS19号「従業員給付」が改訂され、2013年1月1日以降開始する会計年度より、数理計算上の差異等については、遅延認識が廃止され、純資産の部において税効果を調整した上で発生時に認識し、積立状況を示す額を負債(又は資産)として計上されることになります。富士通の海外連結子会社は国内と同様、2014年3月期から適用されます。

IAS19号の改訂の影響について、2012年3月期の有価証券報告書に次のような記載があります。

「当社グループの海外連結子会社は国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。当連結会計年度末現在、連結 決算手続においては、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告 第18号 平成22年2月19日)に基づき、のれんの償却等、日本基準との主要な差異について修正しておりますが、退 職給付会計における数理計算上の差異の費用処理については修正を要しないことから、海外連結子会社の財務諸表 を利用しております。
IAS第19号の改訂は、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を及ぼす見込みです。連結貸借対照表において は、主として数理計算上の差異を発生時に認識するため純資産が減少する見込みです。また、連結損益計算書にお いては、海外連結子会社の数理計算上の差異に係る費用処理額が増加(注)するほか、確定給付負債(資産)の純 額に係る利息純額の導入による退職給付費用の増加により、営業利益等が減少する見込みです。なお、これらの影 響額については現時点で見積ることは困難であります。」
(未適用の会計基準等)

海外子会社の企業年金にいくら拠出しても、連結財務諸表上、会計基準の改訂により、年金の積立不足が新たに負債に計上されることになるので、いずれにしても純資産はその分減少します。

富士通は、運用資産を増やし高格付け債券などで運用することにより年金資産を積み上げ、少しでも純資産減少の影響を緩和しようと企業年金に拠出する、ということです。

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