J-REIT拡大の条件

日本から500億ドル(約4.2兆円)もの資金が米国の不動産投資信託(REIT)に流入している。これは日本のREIT全体(J-REIT)全体の時価総額を超える額だ。なぜ日本人投資家のお金が 日本の市場に向かわないのか。
(日本経済新聞2012年12月28日23面 経済教室 久恒新立教大学教授)

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久恒教授の提言の概要は以下の通りです。

「第一に、制度の国際化である。日本市場は他国に比べて、資金調達の面で自由度が少ない。市場の状況に応じて臨機応変に資金調達ができるよう多様なメニューをそろえておくことは、一段の安定性向上に寄与するだろう。
(中略)
第二に、透明性の確保である。
(中略)
鑑定評価内容を審査しその内容を投資家に公開する外部中立の審査機関を制度の中に採り入れることと、収支見積書の様式を統一することを提案したい。証券化用不動産の鑑定評価に用いられる収益還元法では、不動産が将来どれだけの収益を生み出すかに着目して評価額を算出する。収支見積書は、純収益が将来どう変化するかを予測した結果の一覧表であり、評価のまとめともいえる。
(中略)
第三に、REITの社会的意義の周知とそれを踏まえた国策としての支援である。日本のREITは不動産の流動化や不動産市場の近代化に加えて、不動産価格を下支えするなど、多くの役割を果たしてきた。さらに、都市の成長戦略に寄与するという役割も忘れてはならない。」(前掲紙)

税制面では、UPREIT制度の導入される必要があります。UPREITとは不動産所有者が所有する不動産を現物出資する際、不動産譲渡益課税を将来に繰り延べることを可能とする仕組みです。米国では、1990年代にUPREITのスキームが創設されたことにより、REIT市場の時価総額や流動性が飛躍的に向上したと言われています。

UPREITは、Umbrella Partnership REITの略です。米国ではREITに現物出資した場合に課税されますが、パートナーシップに現物出資すれば課税されないため、不動産所有者がパートナーシップに現物出資し、REITがそのパートナーシップの持ち分を保有することで間接的に不動産をREIT化するというスキームが、UPREITで、2つの税制が1つの傘に入るという意味で、Umbrella Partnership REITと呼ばれています。
(UPREITについては、2012年10月3日 ロイター「〔焦点〕UPREIT制度、米国で不動産活性化に実績 日本では利用促進の制度不可欠」が参考になります。)

日本では、組合に現物出資を行った場合の組合員間の相互譲渡に関して、課税の繰延べが認められておらず、UPREITのスキームを採用することができません。組合税制を見直す等何らかの措置を講ずる必要があると思います。

年内の更新はこれで終わりにします。
2013年が世界中の人々にとって良い年でありますように。

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