川崎重工解任劇の教訓

三井造船との経営統合案を巡って起きた川崎重工業の社長解任劇は、企業統治(コーポレートガバナンス)や説明責任の観点から、様々な問題を浮かび上がらせた。日本企業の課題や今後の教訓は何か。田中亘・東大准教授、スティーブン・ギブンズ弁護士、小口俊朗ガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン社長の3人にインタビューし、紙上座談会の形で再構成した。
(日本経済新聞2013年7月8日15ページ )

【CFOならこう読む】

−企業統治の観点から川崎重工の解任劇をどう受け止めましたか。

田中氏:川崎重工の解任劇は、以前と比べれば日本企業のガバナンスが向上した証しといえる。社内取締役が大多数を占める日本企業のガバナンスの弱点は、いざという時に社長を止められないことだといわれてきた。だが川崎重工が社内取締役しかいなかったのに前社長を解任したことで、社内取締役でも与えられた権限は行使できるということが示された。」(前掲紙)

そうでしょうか?

花王・カネボウのカネボウ、HOYA・ペンタックスのペンタックス、トップが決めたM&Aを他の社内取締役が止めた事例はありますが、これらを日本企業のガバナンスが有効に機能している事例として考えることはできません。むしろ役員・従業員中心のガバナンスを有する日本企業では、ポストの減少につながるようなM&Aは止めようというインセンティブが働きがちです。

「ギブンズ氏:川崎重工のような経緯で経営トップが解任される例は海外では聞いたことがない。そもそもM&A(合併・買収)案件は経営陣の人事に影響するので、社内取締役は利害関係者になる。だから米国企業の場合、M&Aの是非についての決議は社外取締役に任せ、最高経営責任者(CEO)以下の社内取締役は決議から外れる。」(前掲紙)

“M&A(合併・買収)案件は経営陣の人事に影響するので、社内取締役は利害関係者になる”、特にマネジメントの雇用が流動化していない日本では、この傾向が顕著であるという認識から議論をスタートさせる必要があると思います。

【リンク】

なし