ソニー取締役会、米ファンド提案拒否

ソニーの取締役会は31日、同社の大株主である米有力ヘッジファンドが提案した映画などエンターテインメント事業の分離上場案について審議した。「エレクトロニクス事業とエンタメ事業は一体運営すべきだ」との意見が多く、ファンド提案を拒否する見通しとなった。
(日本経済新聞2013年8月1日11ページ)

【CFOならこう読む】

「取締役の多くが「エンタメ事業を分離せずにエレクトロニクスと密接に組み合わせることがソニーの競争力強化につながる」との見方を示した。」(前掲紙)

サードポイントは、エンタメ事業を分離独立し、その株式の15~20%をソニーの既存株主に割り当てて上場する案を示していると報道されています。

問題は、その後どうするか? です。すべての子会社株式を親会社の株主に分配する、つまりスピンオフすることで完全独立する、というのも選択肢の一つです。

しかしこれを日本で行うと、法人レベルでは譲渡損益課税、株主レベルではみなし配当課税等が生じてしまうので、簡単には実行できないのです。

平成13年に企業組織再編税制が導入された当初から、この問題が指摘されていました。

「別冊商事法務 企業組織と租税法」(江頭憲治朗 中里実編)の中で、組織再編税制に深くかかわった経団連の阿部泰久氏が次のように述べています。

「商法で頭に浮かぶのがこの単独の新設型の分割です。一つの会社を二つに分ける、それによって双方の企業価値が高まることもあり、これが税制上非適格となってしまうのはいかがなものか、という議論もあったわけです。残念なことにその当時、単独で行う新設型の分割という事例はなかったのです。アメリカではいろいろなケースがあるようですが、日本では、その当時、今もそうだと思うのですが、実際にそんなことを考えている会社はなかったのです。
(中略)
主税局との間では、やはり商法が正面から認めている分割の一類型を、税法上まったく手当てしないのはいかがなものか、という議論もあったのです。しかし、「ニーズがないのだから、本当にそのような社会になったとき、あるいはニーズが出たときに、また考えましょう」ということになりました。」

ソニーのケースからも明らかなように時代が変わりました。今やニーズはあるのです。
早急にスピンオフを無税で実行できるよう手当をする必要があると、私は思います。

【リンク】

なし