ソニー、エンタメ事業の分離拒否を通告

ソニーは6日、大株主の米ファンド、サード・ポイントが提案したエンターテインメント事業の分離上場を正式に拒否した。映画や音楽などをスマートフォンで楽しむ時代を迎え、エンタメ事業が持つコンテンツはその切り札になると判断。スマホを土台に、エレクトロニクス事業とエンタメ事業の融合を加速する。
(日本経済新聞2013年8月7日9ページ)

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「サード・ポイントは6日、エンタメ事業の分離提案をソニーが拒否したことについて「失望した」との声明を発表した。一方でソニーがエンタメ事業の経営情報の開示を拡大する方針を示したことは評価。今後も「ソニー経営陣と対話を続けていく」とし、ひとまず融和路線を打ち出した。」(前掲紙)

ソニーは、書簡の中で拒否の理由として次の4つを挙げています。

「・業界・事業構造のダイナミックな変化の中、コンテンツの需要そしてその価値は増大 しており、私たちは、当社のエンタテインメント事業がこのトレンドから今後ますま す利益を享受できると考えていること。

・エンタテインメント事業を完全所有することでグループ内協業の加速、シナジーの促 進、より迅速な事業活動が可能になること。

・資金調達の必要性が生じた場合にも、他に調達手段が存在すること。

・株式公開によらなくともソニーのエンタテインメント事業の情報開示を充実させるこ とは可能であること。

今年度第 2 四半期の決算より、映画分野 及び音楽分野についてカテゴリーを設け、その四半期ごとの売上高を開示情報に含め ることを予定しています。さらに、投資家の皆様が四半期ごとに、いわゆる EBITDA (利払い前、税引き前、減価償却前利益)を計算できるよう、必要な情報についても、 映画分野及び音楽分野を含む全セグメントに関して開示していく予定です。」
2013年8月6日「ソニーからサードポイントへの返信書簡について」株式会社ソニー [PDF]

その他、エンタメ事業を分離上場することで少数株主との利益相反が生じ、その結果、
「グループ会社間取引においても独立当事者間と同様の関係を保 つ必要性や少数株主の権利への配慮など、従来は必要でなかった負担を経営に課すこ ととなり、結果として、それが私たちのコントロール及び戦略の柔軟性を制限し、ソニーグループとしての戦略を遂行することの障害となると考えます。」と述べており、結局、このことによる価値の毀損と、分離上場することによりエンタメ事業の価値を顕在化させることによる価値の上昇との比較考量の問題です。

【リンク】

2013年8月6日「ソニーからサードポイントへの返信書簡について」株式会社ソニー