社内カンパニー制の弊害?ー三菱ガス化学

「社内カンパニー制の弊害が出てしまった」と三菱ガス化学の酒井和夫社長は反省する。事業部ごとの権限委譲を進めた結果、研究開発で「各カンパニーが目先の収益につながるものばかりを追い、大型の開発案件が出てこなくなった」という。事業部の枠にとらわれず案件をリストアップして全社的に議論をする方針に切り替えた。
(日本経済新聞2009年6月27日9面)

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社内カンパニー制の場合、各カンパニーはプロフィットセンターであるだけでなく、インベストメントセンターとなります。したがって各カンパニーの業績評価指標は、投下資本利益率(ROI)またはEVAがマッチします。

研究開発を縮小すると、短期的にはROIもEVAも上昇するので、カンパニー制の導入により、行われるべき研究開発投資が行われなくなるリスクはあるのでしょう。

しかし言うまでもなく、経営において重視すべき各指標は独立して存在している訳でなく、それぞれが複雑に絡み合っています。研究開発投資を削減すれば、中長期的に税引後利益が低下するのです。そうすればROIもEVAも低下します。だから、これらを業績評価の指標としても、マネージャーは単純に研究開発投資を削減するとは限らないのです。

問われるべきは、カンパニー制やEVAの善し悪しではなく、マネジメントの善し悪しです。各カンパニー長に、5年後どうやって食っていくのかを厳しく問えば、行うべき投資が行われているかどうかはわかるはずです。

僕には「全員で議論する」というのが解決策であるとは思えません。

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