支援って??

日本の開業率(一定期間に生まれた新たな事業所の割合)が低い理由と、引き上げるヒントを論じてきた。アイデア、意欲、資金があれば起業すること自体はそれほど難しくない。開業後の拡大で真価を問われる。
(日本経済新聞2013年10月3日24ページ)

【CFOならこう読む】

「企業の成功例を増やせば、ベンチャーに投融資するリスクマネーの供給増につながる可能性がある。開業後の支援の充実は当該ベンチャー企業だけでなく、日本の開業率を引き上げて「起業社会」を実現するためにも欠かせない」(前掲紙)

私はこの「支援」という言葉が嫌いです。
ヒトはみな得意なところも不得意なところもあります。
だから企業は多くのヒトによって営まれるのです。
経営者は、自分に足りないところを他者に補ってもらわなければなりません。
従業員として雇用するか、外部のリソースを利用するか、いずれにしても何らか手当をする必要があります。

外部のリソースを利用するのであれば、いくつかの業者の中からフィーとサービス内容を検討し、適当なところを選択します。
業者は支援をするわけでなく、ビジネスをするのです。
「支援」というと「弱いものを助けてあげる」といったニュアンスがありますが、経営者は必要なサービスを適切な価格で購入するだけのことで、決して「支援」を受けるわけではありません。
業者の方も「支援」をしてあげるために善意で近づいてくるわけでありません。
むしろ多くの業者は、創業者が大成功する可能性に乗っかろうと思っているのです。
そのこと自体は悪いことではありませんが、「支援」というと本質を見失うことになります。

ユニクロの現監査役で上場コンサルタントだった安本隆晴さんが書いた「ユニクロ監査役が書いた 伸びる会社をつくる起業の教科書」の中に柳井社長と安本さんの対談が載っています。その中で柳井さんが、上場前の自分は経営を知らなかったが、安本さんは商売がよくわかっていなかった、と指摘しています。
安本さんは、プロフェッショナルとして、柳井さんが不案内であった数値面を中心とした経営管理の手法についてコンサルティングサービスを提供したのであって、決して善意で助けてあげたわけではありません。
柳井さんにとって安本さんとの出会いは決定的に重要だったことは間違いありません。
しかし、それは柳井さんが自分に足りないところを知り、自ら動いて柳井さんが見出したのです。
待っていれば良い人が現れて助けてくれるわけでは決してありません。

【リンク】

ユニクロ監査役が書いた 伸びる会社をつくる起業の教科書

安本 隆晴

出版年月日:2013-09-06

価格:1,575円

情報取得日時:2013-10-03 09:51