賃上げ要請は政策の手詰まりー野口悠起雄氏

円安で輸出企業の利益は増えているが、賃金の増加につながっていない。円安で物価が上昇しているため、国民生活はむしろ苦しくなっている。政府は企業に賃上げを求めているが、これは自由主義経済の原則にもとる。賃上げは現行の政策では難しく、賃上げ要請は政策の手詰まりを意味する。
(日経ヴェリタス2013年11月10日51ページ 異見達見野口悠起雄早稲田大学総合研究所顧問)

【CFOならこう読む】

「企業利益の増加がいずれは賃金上昇に波及するという漠然とした期待があったのだが、いつになっても実現しない。9月の実質賃金は、前年比で1.2%の下落となった。この問題への対処は、緊急の課題だ。」(前掲紙)

賃上げを企業に求めるのは筋違い。それは確かにその通りです。しかし、無意味に内部留保を積み上げている企業が多いこともまた事実です。

「アベノミクスが投資家の期待を高めている間に、企業は内部留保を再考すべきである。選択肢の一つは、積極的な事業展開により、経営を量と質の両面で改革することである。このための厚い内部留保であれば大いに歓迎する。もう一つの選択肢は、量を追わず経営の質を高めることである。これには潤沢な現金保有は不要だから、ドイツ並みの高配当を目指し、その結果として投資家を喜ばせればいい。」(日本経済新聞2013年11月12日21ページ大機小機)

あるべき論はそうですが、そうするインセンティブが企業にはありません。
無意味に内部留保を積み上げている企業は買収リスクが上昇する、だからこれを有効利用することで株価が下がらないように(上昇するように)企業は努力する、こういったガバナンスの要の部分が日本では全く機能していません。

この状況を打破するには、敵対的買収(誰にとって敵対的?)を可能にするような法制度その他インフラを整備することが必要です。

【リンク】

なし