スティール、サッポロ株買い増し断念

米スティール:対サッポロHD株、買い増し提案撤回

米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンは17日、同社が筆頭株主のサッポロホールディングス(HD)に対する株式の買い増し提案を撤回すると発表した。交渉が難航していることに加え、株価下落で買い取り提案価格との価格差が広がっていることなどが理由。保有するサッポロ株は売却しない方針で、3月27日開催のサッポロの定時株主総会で取締役の再任に反対票を投じる意向も明らかにした。
毎日.jp 2009年2月17日

【CFOならこう読む】

これまでのサッポロとスティールの買収提案を巡る攻防の経緯は次の通りです。

2007年2月 スティールがサッポロに買収を提案
2007年3月 サッポロが定時株主総会で新・買収防衛策を可決
2007年11月 スティールが企業価値向上への「提言」を提出
2008年1月 サッポロがこの問題対応の特別委員会に買収提案評価を諮問
2008年2月 特別委が意見書、「買収案は企業価値棄損の恐れ大」
サッポロ取締役会が反対表明
2008年3月 スティールが修正した提案を送付
サッポロがスティールと協議入り
2009年2月 スティールが買い増しを断念

(日本経済新聞2009年2月18日13面)

スティールは、買い増し断念の理由を次のように説明しています。

提案撤回の主な理由は、同社の業績が悪化の一途を辿っていることと、同社が買付提案の内容を株主に受け入れられるようなものにするための交渉を依然として拒否していることです。

サッポロ株式の昨日終値は381円とTOB価格825円を50%以上下回っており、もはやこの条件で買収提案を継続できないとの判断もあったのではないかと推察されます。

いずれにしても行われるべき買収が行われないのは、経営者に対する規律という意味からも価値創造という意味からも望ましくありません。

このブログでも何度も取り上げているように、日本経済は大きな構造転換を必要とする時期に直面しています。そこで必要とされるヒト、モノ、カネは世界に広く求めるべきです。

しかし経営者が株主を選択できる今の仕組みのもとでは、既得権益の確保が最優先とされ、行われるべき経営権の移動が行われません。特に外資に対しては交渉の場すら与えられないケースが少なくありません。

私はいま日本は真に開国すべきときに来ていると思います。
そしてそれしか長期的に雇用を確保する手立てはないと思っています。

【リンク】

2009年2月17日「スティール・パートナーズ・ジャパン、サッポロの長引く業績悪化と交渉拒否のため、株式33.3%買付け提案を撤回」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー