1円ストックオプション広がる

上場企業のストックオプション(株式購入権)で、1株1円で買えるタイプが主流になってきた。株価動向によって権利が行使できなくなる通常型と違い、役員や従業員がほぼ確実に利益を得られ、報酬として機能しやすいのが特徴だ。
(日本経済新聞夕刊2013年12月26日1ページ )

【CFOならこう読む】

「企業が無償で役員や従業員にストックオプションを割り当てる。役員と従業員は1株当たり最低額の1円を支払って株式を取得し、市場で売却すれば利益が得られる。
 直近ではファーストリテイリングが12月、役員を含む従業員30人を対象に割り当てた。」(前掲紙)

役員退職慰労金の代替として1円ストックオプションを発行する事例については当ブログでも何度かエントリーしています。
課税上の取扱いが気になるところですが、2004年11月2日付の伊藤園による事前照会に体する国税庁の文書回答がウェブサイトに公開されています。

伊藤園の新株予約権の内容は、次のようなものでした。

「「権利行使時の権利行使価額を1株当たり1円とし、その権利行使期間は、発行日から30年以内において、役員を退任したときに、退任した日の翌日から10日を経過する日までの間に限り、一括して権利行使しなければならないことになっております。」
「権利行使期間が退職から10日間に限定されている新株予約権の権利行使益に係る所得区分について」国税庁

これについて、法令、通達に照らし退職所得とすることで問題ない旨回答がされています。

一方、ファーストリテイリングの1円ストックオプションは、権利行使期間を退職後としていません。
新株予約権の行使時点で役員又は従業員でなければ行使はできない旨の制限はありますが、新株予約権の譲渡も取締役会の承認があれば可能です。

税務上は非適格ストックオプションとしての取扱いになるのでしょうが、付与時課税の要否について立法上の検討が必要であると思います。

【リンク】

2013年10月10日「株式報酬型ストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ」株式会社ファーストリテイリング  [PDF]

「権利行使期間が退職から10日間に限定されている新株予約権の権利行使益に係る所得区分について」国税庁