ルネサス、不採算品の合理化進まず

半導体大手のルネサスエレクトロニクスは2015年度末までに国内で5400人の人員削減に踏み切る方針を固めた。約2万人にのぼる国内従業員の25%に相当する。同社は国内の工場や開発拠点の集約など構造改革を進めている。閉鎖工場のほか、管理部門などを含めて人員削減を加速し、経営再建を急ぐ。
(日本経済新聞2014年1月22日10ページ )

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「ルネサスは2013年9月末、政府系ファンドの産業革新機構、トヨタ自動車やパナソニックなど大口顧客8社を引受先とする1500億円の第三者割当増資を実施。69・16%を出資する革新機構が主導して再建を目指すことになった。
 その結果、大口顧客向けに供給する採算の取りづらい製品の開発・生産中止が容易でなくなっている。海外の同業他社幹部は「ルネサスはなぜ付加価値の高い製品を安く売るのか」と指摘。価格の引き上げも思うにまかせない状態も続いているようだ。」(前掲紙)

ルネサスは、2012年にKKRが買収しようとしていたところ、最終的には産業革新機構が主導して再建を目指すことになりました。しかし今日のようなニュースを見るとその選択が本当に正しかったのか疑問に思います。

日本プライベート・エクイティ協会が2013年3月8日付で出した、「我が国経済の本格的再生に向けた 民間投資資金の積極的活用に関する提言」は次のように述べています。

「市場メカニズムが正常に機能している場面において、政府及び関係諸 機関が、成長分野を自ら探し出し成長資金を直接投じ、あるいは問題を抱えた企業に対 する出資を直接行って支援するのは、民間との正常な役割分担を超える危険性があるも のと考えます。政府及び関係諸機関による経済復興政策は、本来的には制度設計や規制 整備による市場機能の正常化・活性化にあるべきであり、それを超えて、政策金融によ る投融資が行われ、あるいは官製ファンドによる出資が行われるのは、あくまで市場に おけるリスクマネーの供給が機能不全に陥っており、市場機能に委ねているだけでは市 場メカニズムが正常に働かず、公的な支援がない場合に比して社会的コストが膨大にな ると判断される場合に限定されるべきものと考えます。」

政策的な支援を行ったことで市場メカニズムに従った価格付けも出来ないようであれば、正に本末転倒、その結果5400人もの従業員の追加削減を行うとは、いったいどういうことでしょう?

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