配当課税強化?

法人実効税率引き下げの代替財源の候補として、株式の配当や売却益への課税強化が突如として浮上してきた。一体どういう風の吹き回しなの。
(日経ヴェリタス2014年3月17日71ページ 放電塔 金融記者座談会)

【CFOならこう読む】

「実は財務省そのものから出た議論ではなくて、政府税調の一部の委員が以前から唱えている意見なんだ。その代表格が一橋大学の田近栄治特任教授で、法人税率引き下げと株式配当など金融所得への課税強化について「検討の余地は十分にある」と主張してきた。法人税率を引き下げれば企業業績の改善を通じて株主配分の増加につながるので、その一部を株主から回収する、という論理立てのようだ」(前掲紙)

田近栄治特任教授の主張は、以前当ブログでも取り上げました。
2013 年7月9日エントリー「法人実効税率引き下げの財源」

法人税率引き下げの財源を個人の金融所得課税増税に求めることも検討すべきだとして次のような議論をしています。

「企業のあげる所得を法人段階だけではなく、配当や、株式などのキャピタルゲイン(売却益)まで含めて考えることである。この観点に立てば、法人税率の引き下げと同時に、金融所得に負担の一端を求めることも選択肢となる。日本より法人税率の低いドイツや英国では、日本より高い税率を金融所得に課していることを参考にすれば、検討の余地は十分にある。法人税率が下がることによって企業は業績を改善し、その成果を株主に還元する。それによって、企業にも株主にもよりよい結果を実現することが可能となるからである。」(日本経済新聞2013年7月9日26ページ 経済教室)

法人課税の問題は、法人レベルの議論だけでなく個人の所得税レベルの議論まで必要とすることは間違いありません。

法人税率を引き下げることで、個人レベルの投資リターンが上昇するのであれば、一定程度金融所得課税を強化することも検討の余地はあるでしょう。

ただし、その場合、金融所得課税を強化することの弊害も十分に検討される必要があります。例えば起業家は、キャピタルゲイン課税が強化されている国での起業を選択するだろうか、ということを。

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