日本石油、原油ヘッジ取引に関する東京国税局の更正処分の取消を求め提訴

[東京 23日 ロイター]新日本石油(5001.T: 株価, ニュース, レポート)は23日、原油のヘッジ取引に関して東京国税局が行った更正処分の取り消しを求め、東京地裁に訴訟を提起したと発表した。
新日石は原油価格の変動リスクを低下させキャッシュフローを固定化することを目的に、原油先物スワップ取引を行っているが、2006年10月に東京国税局から03年度分と04年度分の同取引に関する法人税の更正処分を受けた。同年12月に国税不服審判所長に対し処分の取り消しを求める審査請求を行ったが、今年1月に同審判所長は棄却した。

ロイター 2009年7月24日

【CFOならこう読む】

今日の新聞記事によると、

「更正処分を受けたヘッジ取引は、10年程度の長期契約で固定した原油価格の変動リスクを避けるため、原油先物を使って金融機関とスワップ取引を結ぶ内容」

とのことです。

会社はプレスリリースで次のように説明しています。

「当社は、需要家等にTES(Total Energy System:A重油や灯油による電熱エネルギー供給システム)により発電した電力、または発電に必要なA重油等を長期間固定した価格で販売する事業を行っております。当該事業に際しては、原燃料となるA重油等の製造原価を構成する原油価格の変動リスクを低下させ、キャッシュフローを固定化することを目的として、「原油先物スワップ取引」(以下「本件ヘッジ取引」という。)を行っております。
2006年10月、当社は、東京国税局から、2003年度および2004年度分の本件ヘッジ取引に関し、法人税の更正処分を受けました。同年12月、当社は、国税不服審判所長に対し、同処分の取消しを求める審査請求を行いましたが、本年1月に、同審判所長は、当社の審査請求を棄却する旨の裁決を行いました。
当社といたしましては、東京国税局の行った更正処分は、本件ヘッジ取引に関する法人税の解釈・適用を誤った違法なものであって、ヘッジ取引の存在意義を失わせるものであり、これを受諾することはできないことから、同更正処分の取消しを求め、東京地方裁判所に対し訴訟を提起することといたしました。
当社は、今後、訴訟手続におきまして、本件ヘッジ取引につき当社が行った税務上の処理は、法人税法および関係法令の諸規定に照らして適法なものであったことを、鋭意主張してまいる所存です。」

説明が不足しており、このプレスリリースを見るだけではよくわからない部分があります。
そこで更正処分取消を求めた際のニュースを探してみると次の記事が見つかりました。

「新日本石油は、東京国税局の税務調査により2006年10月31日付で更正処分を受けたヘッジ取引について、国税通則法の規定に基づいて、国税不服審判所長に更正処分の取り消しを求める審査請求を行ったと発表した。

同社は、発電した電力や発電に必要なA重油などを長期間固定した価格で販売する事業を行っているが、固定価格のため、製造原価である原油価格の変動リスクを同社が負担するため、原油価格変動リスクをヘッジし、キャッシュフローを固定化することを目的としたスワップ取引を行っている。

東京国税局はこのスワップ取引が原油価格変動による損失を減少させるのに有効ではないと判断し、取引を期末時点ですべて決済したものとみなして算出した利益に課税、所得金額を更正し、2005年度のみなし利益284億円とし、追徴税額と法人税などを含めて合計125億円を課税した。

同社では東京国税局の更正処分には合理性が無いと判断、更正処分の取り消しを求めることにした。」
新日本石油、東京国税局処分を不服として審査請求へ

法人税法上、繰延ヘッジ処理に対する制限として、その年度の期末時または決済時における有効性割合が有効性幅に入っていない場合、有効性幅に入らない期間に生じた利益額または損失額のみを、その期間の益金または損金に算入しなければなりません。
(法人税施行令121条の3第4項)

この有効性の判定について、会社と税務当局との間に見解の相違があったものと思われます。

そもそも論として、原油価格が製品価格に転嫁される事業を営む会社において繰延ヘッジ処理を認めること自体おかしいのではないでしょうか?

【リンク】

2009年7月23日「ヘッジ取引に係る更正処分の取消訴訟の提起について」新日本石油株式会社