日立がマクセルなど上場5社を完全子会社化

日立製作所は日立マクセルなど東証に上場しているグループ5社を完全子会社化する。8月下旬にTOBを開始し、最大3000億円を投じ、それぞれ約5〜7割の出資比率を全額出資へ引き上げる。日立は2009年3月期に国内製造業では最大となる7873億円の連結最終赤字に陥った。グループ戦略を転換し、上場子会社16社のうち社会インフラなど成長を見込める分野の5社を一斉に取り込み、経営再建を急ぐ。
(日本経済新聞2009年7月27日1面及び9面)

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完全子会社にするのは日立マクセル、日立プラントテクノロジー、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービスの5社です。

日本経済新聞 2009年7月27日 1面より

日本経済新聞 2009年7月27日 1面より

ベネット・スチュワートは、著書The Quest for Valueの中で子会社公開のデメリットを次のように列挙しています。

・公開を維持するためのコストが重複
・親子会社間の取引の公平性の確保が難しい
・子会社独自の取締役会が必要になり少数株主の権利の尊重が必要になる
・親会社が直接ファイナンスする場合よりもコスト高になる場合が多い
・親会社の出資比率が80%を切ると連結納税グループから外れる(日本では100%)

・子会社に関する機密情報の開示が必要になる

「今回完全子会社化する5社を含む16社の上場子会社を持ち「親子上場」の代名詞だった日立製作所の路線転換は、日本企業の連結経営が曲がり角を迎えたことを示す。
資金調達面などの利点はあるが、「少数株主軽視」という批判の高まりや、上場維持にかかるコストなどのマイナス面も無視できなくなったいる。」(前掲紙)

特に子会社が獲得したキャッシュを、連結グループの他事業に投下するようなことがある場合には、重大な利益相反が生じることになるので、少数株主にとっては看過できない問題になるのです。

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日本経済新聞 2009年7月27日 9面より

100%子会社化することにより連結納税グループに取り込むことも、今回完全子会社化に踏み切ることになった理由のひとつであると思われます。

いずれにしても、比較的株価が安いこの時期は完全子会社化を始めとしてグループ内再編の好機と言えます。

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