ディール・オブ・ザ・イヤー エクイティ部門

ベスト1位はヤマダ電機が2月に発行を決めた1500億円のCB。調達資金の一部を自社株買いにあてる「リキャップCB」と呼ばれる新戦略を市場は評価した。
(日経ヴェリタス2008年12月28日 2面)

 【CFOならこう読む】

「CBはあくまでも負債と位置付けている。転換を前提とせず、手元資金で償還する方針だ。」(ヤマダ電機 岡本潤取締役兼執行役員専務 前掲紙)

負債と位置付けたCB発行がエクイティファイナンス部門のベストと評価されること自体、今年のエクイティファイナンスの低調さを象徴しています。

「山田昇・現会長の指示も希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろというものだった。」(岡本専務 前掲紙)

リキャップというより、”金利ゼロ&希薄化回避”の条件をクリアするための解がリキャップCBであったということだったのですね。
私のブログでは2008年2月27日にこのディールを取り上げました(https://cfonews.exblog.jp/7371460)。

そこで私は次のような指摘をしています。

「それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。」

リキャップというのは資本コスト引き下げのために行われる、資本構成の変更のことですが、そのためには負債で資金調達し、この資金で自己株取得をする必要があります。
このCBは最適資本構成を指向するものではなく、ゼロコストのためのCB発行+CBの希薄化効果を排除するための自己株取得=(結果として)リキャップCBであったということです。

それにしても山田会長の「希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろ」という指示は、単純明快で何とも言えず迫力を感じますね。

【リンク】

2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機