利益偏重は悪か?

ビジネス教育 金融危機の教訓 利益変偏重の風潮見直し

「ビジネススクールにとって今回の金融危機は極めて教訓が多い。経営学を大きく変えることになるだろう。まず我々を含めて、利益を重視し過ぎる風潮があった。株主は『他社がもうけているのだからウチももっと資金を借りて、もっともうけろ』と金融機関などに圧力をかけ、マスコミも利益率ばかりに注目した。こうした風潮からは脱する必要がある。」(MITスローン経営大学院長 デイビッド・シュミッタライン氏)
(日本経済新聞2008年12月6日9面 世界を語る)

【CFOならこう読む】

経営における利益や利益率の重要性は今後も変わることはないと思います。我々はこれに代わるツールを持っていません。大事なことは、リスクテークについて、きちんとマネジメントされることです。なぜならリスクテークこそがもうけの源泉だからです。

ですが、会計は、リスクについて何も語らないことを知ることは重要です。この点、ブラック・ショールズモデルでノーベル賞を受賞したロバート・マートンは、「金融技術革新と金融機関の経営および規制」という論文の中で次のように論じています。

「枠組みとしての会計は、価値の分配に向けられている。この次元では、会計は効果的である。ここでの問題は、会計システムが基本的に価値の分配にのみ注目しているということなので、それが取得原価であるのか、時価であるのかを区別する必要はない。それゆえ、会計システムは、リスク配分を識別するには非効果的な枠組みとなる」

「システミック・エクスポージャーについて適切な相対比較を行うことは、短期的には主要な計測の問題である。長期的には、すでに示したように、財務会計は、根本的な修正を必要としており、「リスク会計」と呼ばれる特別の新しい分野が創造されなければなりません」

 しかし、優秀なマネジメントは自社のリスクについて十分に理解しているのが普通です。「リスク会計」を利用できるなら、それにこしたことはありませんが、なければ経営できないということもないはずです。

大事なことは、マネジメントが、自社を巡るリスクをよく知り、分散化すべきリスクとそうではないリスクを仕訳し、受容すべきリスクを判断し、その範囲内で利益や利益率の最大化を目指すことだと私は思います。
 

【リンク】

金融技術革命
Robert C. Merton

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