住友信託資本増強 何故優先株?

住友信託資本増強 何故優先株?
[東京 29日 ロイター] 住友信託銀行(8403.T: 株価, ニュース, レポート)は米シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)傘下の日興アセットマネジメントを買収することで、シティと大筋合意した。複数の関係筋が29日までに明らかにした。
住友信託銀が日興アセット買収で大筋合意 – ロイター 2009年7月30日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-10272020090729
【CFOならこう読む】
「住友信託は日興アセットの株式のほぼ100%を取得する見込み。買収に合わせて資本増強に乗り出す公算が大きく、普通株ではなく、優先株による資本調達を軸に検討する見通しだ。」(日本経済新聞2009年7月29日夕刊1面)
優先株による資本調達は、ダイリューションのリスクを嫌ってのものと思われますが、これは正しい財務戦略なのでしょうか?
コーポレートファイナンスという学問は、投資の意思決定とその投資資金の原資を切り放して考えるべきであると教えます。前者は新規投資のリスクとリターンとの関係で決まり、資金調達は最適資本構成によって決まるというわけです。
ブリーリー/マイヤーズの「コーポレートファイナンス」(日経BP)には次の記載があります。
「プロジェクトは原則として、それぞれに応じた資本の機会費用によって評価されるべきである。
あるプロジェクトから、そのプロジェクトのベータに見合う以上の収益率が見込まれるならば、そういったプロジェクトは採用すべきである。
ほとんどのプロジェクトは平均的なリスクを有するものとして取り扱うことができる。すなわち、その会社のその他の資産のリスクの平均に比べ、より安全でもなく、よりリスクが高くもないものとして取り扱うことができる。このようなプロジェクトについては、会社の(加重平均)資本コストは適切な割引率である。」
住友信託の日興アセット株式への投資がリスク以上のリターンを生むのであれば、既存株主の顔色を見ることなく、堂々とやれば良いのです。
1000億円の資本調達は最適資本構成との関連で決定すべきで、その上で、種類株でやるという判断をするなら何も言うことはないのですが、株価への影響を懸念するということだけで、種類株によって資本調達をするということなら、それはちょっと違うのではないかと思います。
市場に対し十分に説明することは大切です。理解を求めることも重要です。
ですが、それをろくにせずに、株主を腫れ物のように扱い、まあ種類株なら文句ないだろうというのであればそれは間違っています。
会社は国富創造(株主価値創造)のために存在するのであって、株主のために存在するのではありません。
株主を既得権益者のように扱うことは、株主価値創造と真逆の方向を向くことだと僕は思います。
【リンク】
[東京 29日 ロイター] 住友信託銀行(8403.T: 株価, ニュース, レポート)は米シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)傘下の日興アセットマネジメントを買収することで、シティと大筋合意した。複数の関係筋が29日までに明らかにした。
住友信託銀が日興アセット買収で大筋合意 – ロイター 2009年7月30日

【CFOならこう読む】

「住友信託は日興アセットの株式のほぼ100%を取得する見込み。買収に合わせて資本増強に乗り出す公算が大きく、普通株ではなく、優先株による資本調達を軸に検討する見通しだ。」(日本経済新聞2009年7月29日夕刊1面)
優先株による資本調達は、ダイリューションのリスクを嫌ってのものと思われますが、これは正しい財務戦略なのでしょうか?
コーポレートファイナンスという学問は、投資の意思決定とその投資資金の原資を切り放して考えるべきであると教えます。前者は新規投資のリスクとリターンとの関係で決まり、資金調達は最適資本構成によって決まるというわけです。
ブリーリー/マイヤーズの「コーポレートファイナンス」(日経BP)には次の記載があります。
「プロジェクトは原則として、それぞれに応じた資本の機会費用によって評価されるべきである。

あるプロジェクトから、そのプロジェクトのベータに見合う以上の収益率が見込まれるならば、そういったプロジェクトは採用すべきである。

ほとんどのプロジェクトは平均的なリスクを有するものとして取り扱うことができる。すなわち、その会社のその他の資産のリスクの平均に比べ、より安全でもなく、よりリスクが高くもないものとして取り扱うことができる。このようなプロジェクトについては、会社の(加重平均)資本コストは適切な割引率である。」
住友信託の日興アセット株式への投資がリスク以上のリターンを生むのであれば、既存株主の顔色を見ることなく、堂々とやれば良いのです。
1000億円の資本調達は最適資本構成との関連で決定すべきで、その上で、種類株でやるという判断をするなら何も言うことはないのですが、株価への影響を懸念するということだけで、種類株によって資本調達をするということなら、それはちょっと違うのではないかと思います。
市場に対し十分に説明することは大切です。理解を求めることも重要です。
ですが、それをろくにせずに、株主を腫れ物のように扱い、まあ種類株なら文句ないだろうというのであればそれは間違っています。
会社は国富創造(株主価値創造)のために存在するのであって、株主のために存在するのではありません。
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【リンク】

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