監督当局が市場のリスク分布を常時把握

金融危機を受け、市場規制の全面的な見直しが急務となっている。従来の規制はなぜリスクを見逃したのか。各国が進める規制改革はどんな方向を目指すべきか。ウォール街で長年、リスク管理の責任者を務めたリチャード・ブックステバー氏に聞いた。
(日経ヴェリタス2009年8月9日16面)

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記事は今後の金融規制の方向性を示しています。

-金融危機の原因をどう分析しますか?
「原因はレバレッジ、そしてリスクの不透明さです。」

-従来の規制は何が問題だったのでしょう。
「米連邦準備理事会(FRB)や米証券取引委員会(SEC)などの監督官庁は、役割を果たしています。問題は、個別の金融機関ごとのリスク監視に傾斜しすぎていたことです。

個々の金融機関のリスク管理に問題がなくても、全体では危険な状態ということがあります。皆が同じ種類のリスクを取っている時です。」

-どう防げばよいですか。
「市場の混雑度合いを監視する必要があります。米国の規制改革にも盛り込まれたシステミックリスク・レギュレーターの考え方です。」

-具体的な方法は。
「まず市場に出回るすべての金融商品にタグを付けます。金融機関は保有資産のタグの情報を毎日、監督当局に送信します。レギュレーターはそれらの情報を毎日、監督当局に送信します。レギュレーターはそれらの情報を総合し市場のリスク分布を常に把握します。」

-そうしたやり方は法的・技術的に可能なのですか。
「FRBには既に、銀行に義務を課す権限を持っています。ヘッジファンドと保険会社に対しては権限がないので、法的な対応が必要です。システミックリスクの監督は計算機でデータを分析するだけの単純な仕事です。リスクマネジメントの知識を持つ人材が数十人いればできるはずです。」

こういった規制は米国一国だけでできる話ではないでしょう。安全保障と同様に世界中の協力が必要不可欠です。そうするととても数十人でできるような代物ではないでしょう。

データを分析するのが重要な仕事なわけではなく、分析結果に基づきいかに個別の金融機関を規制するかが重要であるはずです。

しかしその仕事は簡単なものではないでしょう。

-とはいえ、金融機関は利益率の高い複雑な商品をつくろうとします。

「経営者は4半期業績を考えてリスクを取るようになり、5年、10年先を考えた経営をしなくなりました。致命的なリクスを抱えても、先のことは関知しないのです。金融工学を批判する声もありますがモデルをどう使うかは経営の問題です。」

その通り経営の問題です。
そしてコーポレートガバナンスの問題です。

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