日通・郵政事業統合スキーム

日本通運が計画している郵便事業会社との宅配便事業の統合で、2010年3月期に42億円の特別利益が発生することが分かった。統合新会社への資産の現物出資額と簿価との差額が利益計上される。ただ両社の事業価値の算定方法には専門家から疑問の声も上がっている。「かんぽの宿」譲渡問題が話題の日本郵政がからむ「分かりにくい」M&Aは、ここにもあった。
(日経ヴェリタス2009年2月23日14面)

【CFOならこう読む】

日本通運と郵便事業会社の宅配便統合の経緯は以下の通りです。

2007年10月 2008年10月めどに宅配便事業「ゆうパック」「ペリカン便」統合で合意
2008年4月 統合を2009年4月に合意
6月 事業統合のための新会社JPエクスプレス(JPEX)を折半出資で設立
8月 出資比率を郵便事業会社66%、日通34%に決定
2009年1月 統合方式の変更と完全統合の10月延期を発表
4月1日予定 日通がJPエクスプレス(JPEX)「ペリカン便」事業を分割
郵便事業会社がJPEXの増資引き受け
9月末まで 郵便事業会社がJPEXに「ゆうパック」事業を譲渡
10月1日予定 統合完了

(前掲紙)

まず日通が統合準備会社のJPEXに対して分社型吸収分割により宅配便事業を分割し、167億円のJPEX株が割り当てられます。同じタイミングで郵便事業会社がJPEXの増資を引き受けます。その後9月末までに郵便事業会社が「ゆうパック」事業を段階的に譲渡します。この譲渡は現金を対価に行われるものと思われます。

日通の宅配便事業は、設備や建物についてのみ時価評価される「修正純資産価格法」により167億円と評価されましたが、前掲紙は、事業評価がDCF法や市場株価法により行われなかったことについて批判しています。

そのことも問題ですが、昨年8月の株主間契約の本件統合比率がどのように決定されたか全く説明がなかったことがより問題であると私は思います。日通の宅配便事業の評価は、統合比率を規定事実とし、JPEXの資本金等500億円×1/3=167億円と逆算的に行われたと推察できるからです。

【リンク】

平成21年1月23日「郵便事業株式会社と日本通運株式会社の宅配便事業の統合等に関するお知らせ」日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、日本通運株式会社

平成20年8月28日「郵便事業株式会社と日本通運株式会社との宅配便事業統合に係る株主間契約の締結に関するお知らせ」日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、日本通運株式会社