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2013 年 8 月 13 日

日本では「CFO」という役職にまだまだ馴染みが薄く、「財務経理担当取締役」や「管理本部長兼取締役」のことを米国ではCFOというのだろう、という位の認識しかない人がほとんどです。

米国でさえCFOが脚光を浴びるようになったのは比較的最近のことで1990年以後です。1993年に米国のフォーチューンという雑誌が、市場型資本主義の時代を象徴する新しいヒーローとして「スーパーCFO」の特集記事を掲載しました。その特集記事を読むと米国の「CFO」とはどのようなものであるかわかるので、少し紹介したいと思います。

「スーパーCFOが単なる伝統的な「帳簿係」と決定的に異なるのは、その守備範囲が非常に広範な点にある。従来型のCFOはまるで帳簿の記入欄のような狭い世界で豆の数をチェックし、アニュアル・レポートを作成し、誰かが提案した設備投資案件を精査することに終始していた。しかし現代のスーパーCFOは最高級のゼネラル・マネージャーであり、財務戦略やディール・メイキングの専門家であることに加えて、業務全般にわたる該博な知識と鋭い経営戦略のセンスも兼備している。換言すれば、やり手のCFOは単に企業の価値創造のパフォーマンスを測定するだけでなく、価値創造そのものに深くかかわっている。
(最強CFO列伝 井手正介日経BP社より)

gary-wilsonそして「スーパーCFO」の代表選手として、コスト・カッターとして有名なIBMのCFOジェリー・ヨーク、ディズニーが190億ドルを投じて買収したキャピタル・シティーズ/ABCの案件を仕組んだステファン・ボーレンバック、そしてボーレンバックの師匠ゲリー・ウィルソン、採算の悪い新薬開発プロジェクトを正当化する公式を編み出したメルク社のクウォンツCFOジュディ・ルウェント、GEの21世紀に向けた事業ポートフォリオ構築の中心人物デニス・ダマーマンをインタビューを交え詳細に紹介しています。

jerry-york彼らの報酬は数億円、ときには10億円を超えます。そんな「スーパーCFO」はまだ日本に存在しません。政官財が雇用を最優先に戦後奇跡的な復興を遂げるために、全ては“政策的に”にヒト、モノ、カネを動かしてきた日本では、“市場”も彼らの道具にすぎなかったのです。資金の循環は彼らの手先である銀行が一手に担っていたので、“株式市場”が機能する必要性は特になかったのです。しかしバブル崩壊とともに全ては吹き飛びました。今、日本は、好むと好まざるとグローバルな市場型資本主義の渦に巻き込まれようとしています。そしてそんな新しい時代に価値創造の担い手としての「スーパーCFO」の登場が待たれているのです。

しかし「財務経理担当取締役」が「スーパーCFO」に成長するためには多くのことを学ばなければなりません。自分の所属する会社のビジネス、競争戦略上の強み・弱み、バリューチェーンを完璧に理解した上で、会計、税法、会社法、金商法、ファイナンス、ITといった分野の知識を道具として使いこなせなければなりません。そして何より“市場”に対する深い洞察が求められます。表層的な株主価値創造ではなく、市民主義ともいうべき成熟した市場型資本主義の時代に、真の意味での公共の利益を創造しなければならないのです。

stephen-bollenbachこれは大変なことです。「スーパーCFO」は、答えのない問題と日々格闘していくのです。誰にも相談出来ず、七転八倒しながら結果を出し続けなければならないのです。そんな「スーパーCFO」になるために研鑽を続ける人のために、“市場”が提供してくれる毎日のニュースを題材に、実践演習の場を作りたいと思ったのがこのブログを始めた理由です。

今の日本には市場型資本主義の進化に伴う多くの混乱が見られます。間違ったことが平然と行われています。そもそも会社法にだっておかしな所がたくさんあります。法を犯してなければいいだろうではすまないのです。でもそんな時代だからこそ考えるべき題材が巷にあふれています。そこから10年後も20年後も通用する本質的な知恵を身につけることが可能だと思ったのです。そしてまがりなりにも半年続けてきました。

毎朝、その日の新聞から何かひっかかるニュースを見つけ、ネット上でさらなる情報を入手し、考えるに値する問いを立て、そして自分なりに正しいと思える解答を導き出す…、正直言ってかなりきつい作業です。毎朝8時には娘を幼稚園まで送り届けに行かなければならないので、それまでに作業を終わらせなければなりません。なので時間的にもかなりタイトです。

ですが能動的に問いを立て、短い時間の中で筋道を立てて考えるという作業を毎日続けるのって、物凄く自分自身が鍛えられるのです。人ために役立ちたいと思って始めたことですが、結局これって一番自分のためになっているじゃんと最近は感じます。

だから当分続けていきます。もちろん究極の目標はこのブログの読者から一人でも多くの「スーパーCFO」を生み出すことです。

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井手 正介

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