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日立マクセル再上場へ

日立製作所は子会社の日立マクセルを再上場させる。既に東京証券取引所に申請しており、来月にも上場する見通し。時価総額は1000億円を超えるとみられ、日立は98%を持つマクセル株のうち7割程度を売却し連結子会社から外す。
(日本経済新聞2014年2月14日11ページ )

【CFOならこう読む】

「マクセルは磁気テープやレンズなどの光学部品が主力製品であり、日立グループの成長戦略において相乗効果が期待しにくくなっていた。社名は日立マクセルのまま維持する。日立は株式の売却により700億~800億円程度の資金を得る見通しだ。マクセルは持ち分法適用会社となる。」(前掲紙)

日本では課税上の問題があり、スピンオフ(典型的には子会社株式を親会社株式に分配するという形で実行されます)を選択することはできません。しかし、仮に無税でスピンオフを行うことが可能だとして、株主価値を創造するという点でスピンオフが勝っていると判断されても、700億〜800億のキャッシュを獲得する途を捨て、スピンオフを実行するでしょうか?

もしそのような意思が少しでもあるなら、日立のマネジメントから、何故無税でスピンオフが行えないのか、という批判の声が聞こえてくるはずです。

しかし残念ながら、そのような声は聞かれません。

株主価値に軸を置いた財務戦略を立案し、実行する、そういったグローバル企業に必須の姿勢は、まだまだ日本企業には見られません。

【リンク】

なし

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コニカミノルタHD、純粋持株会社廃止

コニカミノルタホールディングス(HD)は10日、2013年4月1日付で子会社7社を吸収合併すると発表した。社名も「コニカミノルタ」に改める。2003年の旧コニカと旧ミノルタの統合以来維持してきた純粋持株会社制をやめる。主力の事務機事業に注力。意思決定を迅速化して新規事業に人材などを機動的に配置できるようにする。
(日本経済新聞2012年10月11日13面)

【CFOならこう読む】

「コニカミノルタHDは2003年の統合以降。2006年に一眼レフカメラ事業をソニーに売却して、カメラや写真感光材料の事業から撤退するなど、事業の取捨選択を進め、中核の事務機事業を強化してきた。」(前掲紙)

2003年1月7日に発表された「コニカとミノルタの経営統合について」を見ると、統合は、対等の精神で行われることが強調されています。

この統合は、純粋持株会社の下に、情報機器事業、オプト事業、カメラ事業、フォトイメージング事業、計測機器事業、の各事業会社をぶらさげるスキームが採用され、統合作業はこの事業会社単位ごと行われました。

今般の純粋持株会社廃止は、10年かかって漸く統合作業が完了したことを表しているのだと思います。

2003年1月7日のプレスリリースには、取締役の構成はコニカとミノルタ両社同数とすることが書かれています。
今はどうなっているかなと現在の取締役の状況を調べてみると、次のようになっています。

太田 義勝 取締役会議長 昭和39年4月 ミノルタカメラ株式会社入社
松﨑 正年 (代表執行役社長) 昭和51年4月 小西六写真工業株式会社入社
松本 泰男 昭和56年7月 小西六写真工業株式会社入社
木谷 彰男 昭和47年4月 ミノルタカメラ株式会社入社
山名 昌衛 (常務執行役) 昭和52年4月 ミノルタカメラ株式会社入社
安藤 吉昭 (常務執行役) 昭和50年4月 小西六写真工業株式会社入社
杉山 高司 (常務執行役) 昭和49年4月 ミノルタカメラ株式会社入社
出原 洋三 社外取締役
伊藤 伸彦 社外取締役
近藤 詔治 社外取締役
吉川廣和 社外取締役

見事なたすき掛け人事と言うべきか?!

【リンク】

2003年1月7日「コニカとミノルタの経営統合について」コニカ株式会社 ミノルタ株式会社
2003年5月15日「コニカとミノルタの経営統合における今後の企業再編方針について」コニカ株式会社 ミノルタ株式会社

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完全子会社を存続会社とする持株会社との合併ー日本製紙グループ本社(持株会社)と完全子会社日本製紙との合併

 

日本製紙グループ本社は25日、洋紙をつくる完全子会社の日本製紙と、2013年4月1日に合併すると発表した。日本製紙が存続会社となって上場し、2001年に導入した純粋持株会社の体制はやめる。
(日本経済新聞2012年4月26日9面)

【CFOならこう読む】

日本製紙グループ本社は、2001年に日本製紙と大昭和製紙が株式移転による共同持株会社方式で事業統合した際設立された純粋持株会社です。今回の合併により、10年以上かかって漸く経営統合が完了したということなのかもしれません。

合併の要旨は次の通りです。

「(1) 合併の日程
合併決議取締役会 平成24年4月25日 (水)
合併契約締結 平成24年4月25日 (水)
定時株主総会基準日 平成24年3月31日 (土)
合併承認定時株主総会(日本製紙) 平成 24 年 6 月 22 日 (金)(予定)
合併承認定時株主総会(日本製紙グループ本社) 平成 24 年 6 月 28 日 (木)(予定)
上場廃止日(日本製紙グループ本社) 平成 25 年 3 月 27 日 (水)(予定)
合併の予定日(効力発生日) 平成 25 年 4 月 1 日 (月)(予定)

(2) 合併方式 日本製紙を存続会社とする吸収合併方式で、当社は解散により消滅いたします。

(3) 合併に係る割当ての内容
会社名     日本製紙(※)        日本製紙グループ本社
 合併比率      1 1

(注)1 株式の割当て比率 日本製紙グループ本社の普通株式 1 株に対して、日本製紙の普通株式 1 株を割当て交
付いたします。本合併に伴い、日本製紙グループ本社の普通株主が受け取る対価は 188,332 百万円(平成 24 年 4 月 24 日における日本製紙グループ本社の東京証券取引所 での終値 1,620 円に発行済株式総数 116,254,892 株を乗じた額と同額)となります。 (※) 日本製紙は平成 24 年 4 月 24 日に株式併合を行い、発行済株式総数は116,254,892 株となっております。

2 合併比率の算定根拠
当社は公平性・妥当性の確保を第一義と考え、第三者機関であるみずほ証券株式会社 (以下、「みずほ証券」)に本合併が当社および当社株主が保有する普通株式に与える影 響の分析を依頼し、分析資料を受領しました。当社および日本製紙はみずほ証券から受 領した分析結果等を総合的に勘案して上記のとおり合併比率を決定しております。

3 当社が保有する日本製紙株式 当社が保有する日本製紙株式は、合併効力発生日において日本製紙が保有する自己株式となりますが、当社は本合併により、当該株式の全てを新株発行に代えて全て日本製紙グループ本社の株主(ただし、日本製紙グループ本社を除く)に割当て交付いたします。」
2012年4月25日「当社連結子会社日本製紙との合併契約の締結、ならびに日本製紙と 当社連結子会社日本大昭和板紙、日本紙パックおよび日本製紙ケミカルとの 合併契約の締結に関するお知らせ 」 株式会社日本製紙グループ本社   [PDF]

完全子会社である日本製紙が存続会社となるので、合併に際し日本製紙は日本製紙グループ本社が保有する日本製紙株式を自己株式として受け入れることになりますが、これを合併対価として日本製紙グループ本社の株主に交付するということです。

会計処理は、「企業結合会計基準」及び「企業結合会計基準および事業分離等会計基準に関する適用指針」に定める共通支配下の取引に該当します。

個別財務諸表上は、親会社から受け入れる資産及び負債は帳簿価額により計上し、親会社が所有していた子会社株式を自己株式として株主資本から控除します。また移転された資産及び負債の差額が純資産として処理されます。
(適用指針210項)

連結財務諸表上は、親会社が子会社を吸収合併したのと同様の処理になり、合併前の連結財務諸表の帳簿価額が引き継がれます。
(適用指針212項)

【リンク】

2012年4月25日「当社連結子会社日本製紙との合併契約の締結、ならびに日本製紙と 当社連結子会社日本大昭和板紙、日本紙パックおよび日本製紙ケミカルとの 合併契約の締結に関するお知らせ 」 株式会社日本製紙グループ本社   [PDF]

「事業統合(進捗状況)について」日本製紙株式会社 大昭和製紙株式会社

 

セブン&アイ・ホールディングスとイオンの苦闘

セブン&アイ・ホールディングスとイオンが苦闘している。国内消費の成熟を乗り越えようとM&Aなどで拡大路線を突き進んできた結果、ここへきてその非効率性が浮き彫りに。2007年2月期に営業最高益を記録した後は足踏みが続き、米タルボットの売却や西武百貨店の店舗閉鎖などに追い込まれた。収益力や財務力では差があるものの、「グループ力」のテコ入れが課題だという点は共通する。持株会社のあり方を含めた抜本的な経営体制の見直しが、待ったなしだ。
(日経ヴェリタス2010年2月21日14面)

【CFOならこう読む】

「イオンの上場子会社は17社と国内企業で最多。持分法適用会社は7社ある。海外でも子会社が4社上場している。かつては上場益を出店など成長投資に充てる前向きな目的もあったが、今では少数株主が増えたことで利益の社外流出を招くマイナス面が指摘されるようになった。前期末の少数株主持分は2,838億円で純資産の実に4分の1。税引後利益の約3割が少数株主利益として流出している。
中でも「本体との関係性が強く、完全子会社すべき」(国内証券)と指摘されるのが中核子会社のイオンモール。イオンモールの今期の予想純利益は前期比1%増の216億円で、イオン連結(75億円~150億円)を上回るグループ最大の稼ぎ頭だ。
(中略)
イオンモールを株式交換で完全子会社化すると、イオンの発行済株式数(約8億株)は約2割増えるが、それでも今期の1株利益は約18円~26円(のれん代償却を除く)とイオンの会社予想(9.8円~19.6円)より増える」(前掲紙)

イオンの2010年2月期の予想1株利益は、9.8円~19.6円。株価が924円(2月23日終値)なので、PERは47.1倍~94.2倍の水準です。一方、イオンモールの2010年2月期の予想1株利益は、118.71円。株価が1,620円(2月23日終値)なので、PERは13.6倍の水準です。

ところで、自社よりも低PERの会社を合併又は株式交換で買収すれば、必ず自社のEPSは上昇します(のれん償却費を計上しないと仮定した場合)。これはコングロの算術とも呼ばれ、1960年代にEPSの成長を目的に多数のコングロマリット企業群が誕生しました。

「もっともこうしたコングロマリット・ブームは長続きしなかった。財務会計ルールの不備と投資家の一時的な錯覚につけこんだコングロ企業のゲームのルールは、やがて投資家の気がつくところとなり、1960年代末には相場下落とともに馬脚を現し、成長の息の根を止められてしまった。しかし、わが国では、こうした財務会計指標の表面的な改善を重視したM&Aも非常に多いと思われる」(経営財務入門 井手正介/高橋文郎 日本経済新聞出版社)

完全子会社化は良いのですが、EPSが改善するからといって、価値が創造されることにはならないことに注意が必要です。

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なし

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三越伊勢丹、傘下の三越7店舗他を分社化

三越伊勢丹、傘下の三越7店舗他を分社化三越伊勢丹ホールディングスは24日、傘下の三越の地方7店舗を分社化すると正式に発表した。受け皿となる新会社を10月に設立したうえで、2010年4月に札幌店(札幌市)や松山店(松山市)など対象店舗の運営を新会社へと引き継ぐ。地域の実情に合わせた営業体制を作り、経営コストの圧縮につなげる。
NIKKEI NET2009年8月24日

【CFOならこう読む】

地域ごとに店舗経営の独立性を高め、収益の状況に合わせて賃金の水準を変更したり、地域の消費事情に合わせた販売戦略を立てられるようにすることを目的とした再編です。具体的には以下の手順で行なわれます。

1.平成21年10月1日を期して、 伊勢丹から静岡伊勢丹及び新潟伊勢丹に係る経営管理及び営業支援業務の一部を承継して、両社を直接子会社とする。この再編は無対価の吸収分割により行われます。

2.平成22年4月(予定)に、株式会社三越(以下「三越」という。)から札幌・仙台・名古屋・広島・高松・松山・福岡の各地域の百貨店運営事業を承継すべく、地域事業準備会社として弊社直接出資の新会社7社を設立する。

これにより、平成20年10月に三越伊勢丹HDと直接の資本関係となった株式会社ジェイアール西日本伊勢丹(以下「WJRI」という。)、平成21年7月末に株式会社丸井今井から持株会社が事業を譲り受けた株式会社札幌丸井今井(以下「札幌丸井今井」という。)及び株式会社函館丸井今井(以下「函館丸井今井」という。)、並びに株式会社岩田屋(以下「岩田屋」という。)の臨時株主総会における承認を経た上で完全子会社化を予定している岩田屋とあわせ、持株会社の直下に三越、伊勢丹及び地域事業会社等の百貨店事業会社が並列する組織体制が構築される。

「三越伊勢丹グループの百貨店事業に係る  組織再編(吸収分割及び新会社設立)のお知らせ」3ページより
「三越伊勢丹グループの百貨店事業に係る 組織再編(吸収分割及び新会社設立)のお知らせ」3ページより

3.新潟エリアをモデルエリアと位置づけ、先行して両店舗の一体運営化を進め、平成22年4月(予定)には三越新潟店と本吸収分割によって持株会社の直接子会社となる新潟伊勢丹を統合する予定。そのノウハウを活用して札幌と福岡においても一体運営を進める。

「三越伊勢丹グループの百貨店事業に係る  組織再編(吸収分割及び新会社設立)のお知らせ」3ページより
「三越伊勢丹グループの百貨店事業に係る 組織再編(吸収分割及び新会社設立)のお知らせ」3ページより

4.さらに、平成23年4月(予定)には、営業基盤の整備に向けた組織再編の最終形として、全国百貨店で店舗売上高1 位、2 位の三越日本橋本店、伊勢丹本店と、世界有数の商業集積地・銀座の三越銀座店の旗艦3店を中核とした首都圏の各店舗を擁する、三越及び伊勢丹の両社を統合する。

「三越伊勢丹グループの百貨店事業に係る  組織再編(吸収分割及び新会社設立)のお知らせ」4ページより
「三越伊勢丹グループの百貨店事業に係る 組織再編(吸収分割及び新会社設立)のお知らせ」4ページより

「店舗が併存するエリアについては、営業施策で連携をとりつつ、両店舗のブランドの明確化を行ない、それぞれ特色ある店舗としてお客さまのご期待にお応えすることで、両店が提供できる品揃えの質・幅を広げ、地域のお客さまの満足を高めていきます。あわせて、後方部門の統合による物流費・賃借料の削減、共同取組による経費の有効活用など、単店舗では成し得なかった効率的なエリア運営体制を構築していきます。」(プレスリリース)

とのことですが、1+1=2以上の効果を生むことができるのか疑問です。必要なのは事業の統合ではなく、店舗の統合だと僕は思うのですが・・・。

【リンク】

2009年8月24日「三越伊勢丹グループの百貨店事業に係る 組織再編(吸収分割及び新会社設立)のお知らせ 」株式会社三越伊勢丹ホールディングス[PDF]

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カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のグループ内再編

カルチュア・コンビニエンス・クラブが6日発表した2009年4~6月期連結決算の経常利益は前年同期比16%減の29億円だった。連結子会社が減ったことに加え、映像・音楽ソフトのレンタルや販売を手掛ける「TSUTAYA」事業が振るわなかった。
売上高は同17%減の469億円。昨年9月にアイ・エム・ジェイが子会社から持分法適用会社に、今年5月には子会社だったデジタルスケープが連結対象から外れた。両社で計59億円の減収要因。さらに「CDやDVDの販売の落ち込みが大きかった(柴田励司最高執行責任者)。
既存店でのレンタルも同2%減った。4月の子会社との統合に伴う税負担軽減で、純利益は同81%増の35億円だった。

(日本経済新聞 2009年8月7日 14面)

【CFOならこう読む】

「4月の子会社との統合に伴う税負担軽減」というところが気になったので、少し調べてみました。

平成21年4月1日付で、CCCの直接又は間接の完全子会社(完全孫会社等を含む)11社の事業を、株式会社CCC(旧商号:株式会社TSUTAYA)に再編・統合しています。

組織再編の概要は次の通りです。

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 4ページ

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 4ページ

合併対象となる子会社

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 1ページ

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 1ページ

会社分割対象となる子会社

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 3ページ

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 3ページ

事業譲渡・解散の対象となる子会社

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 3ページ

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 3ページ

商号変更の対象となる子会社

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 4ページ

「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」 4ページ

2009年度第1四半期のPL末尾は次のようになっています。

税金等調整前四半期純利益 2,287百万円
法人税、住民税及び事業税 368
法人税等調整額 △1,757
法人税等合計 △1,389
少数株主利益又は少数株主損失 152
四半期純利益 3,524

法人税等調整額は、繰延税金資産の増加によるものです。前期末比で

繰延税金資産(流動)2,281百万円→3,811百万円

と大きく増加しています。

原資は繰越欠損金でしょう。前期末の税効果の注記を見ると繰延税金資産の内訳の中で繰越欠損金が12,842百万円もあります。

これは内訳項目の中で突出して大きな金額です。一方評価性引当額12,734百万円計上されており、繰越欠損金部分に見合う繰延税金資産の資産性を否認しています。

つまり繰越欠損金を抱える子会社単体では将来的に繰越欠損金を使い切るだけの収益性が見込めないため、合併により繰越欠損金を存続会社に引継ぎ、これを使い切ろうということなのです。

では繰越欠損金を抱える子会社とは?

おそらくそのひとつはTSUTAYA STORESホールディングス(及びTSUTAYA STORES)でしょう。

前期末の有報の関係会社の状況に、TSUTAYA STORESホールディングスの債務超過額3,215百万円(TSUTAYA STORESの債務超過額は2,583百万円)と記載されています。

TSUTAYA STORESホールディングスは、もともとユーファクトリーという会社で昨年8月に商号変更するとともに、TSUTAYA STORESの店舗事業に関する権利義務を吸収分割により承継しています。

また、今年1月1日にはヴァージン・メガストアーズ・ジャパンを吸収合併しています。

TSUTAYA STORESをめぐる再編で繰越欠損金がどう引き継がれたか不明ですが、数社の繰越欠損金がこの会社に集約されている可能性もあります。

今回の再編のひとつの理由が、この繰越欠損金の有効利用にあると推測されます。

なお、今年10月1日にホールディングス(カルチュア・コンヒ゛ニエンス・クラフ゛株式会社)と4月1日の再編の存続会社である100%子会社である株式会社CCCを合併することが8月5日に開示されています。

【リンク】

平成21年2 月12日「当社のグループ内組織再編(子会社間の吸収合併、会社分割、 事業譲渡に伴う子会社の解散及び子会社の商号変更等)のお知らせ」カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社[PDF]

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ソフトバンク・ヤフーの親子上場問題

2009 年 3 月 2 日 コメント 1 件

ヤフー株に「親子問題」

ヤフーの株価が下げ止まらない。きっかけは19日19時過ぎに発表した親会社ソフトバンクのデータセンター事業に対する買収だ。23日には一時2万4140円まで下げ、2003年10月の東証上場以来の最安値(株式分割考慮後)を更新した。450億円という大型買収について、市場関係者からは「親会社への資金支援ではないか」との観測も出ている。世界同時不況の中でも、ヤフーは09年3月期の純利益が過去最高を更新する見通し。懸念されていた「親子問題」が株価の重しとなってきた。
(日経ヴェリタス2009年3月1日21面)

【CFOならこう読む】

記事では、こ株式譲渡は、CB500億円の繰上償還発生の可能性に伴うソフトバンクの資金需要のために行われたものという見方を紹介しています。

ここまで書いたところで次のニュースが飛び込んできました。

ソフトバンク、CB500億円繰上償還、全保有者が請求権使う。
ソフトバンクは2015年3月末に満期を迎える500億円の転換社債型新株予約権付社債(CB)を繰り上げ償還する見通しだ。発行条件に繰り上げ条項があり、金融危機などを背景にCBの保有者全員がその権利を行使するようだ。ソフトバンクは手元資金で対応し、有利子負債の圧縮につなげるとみられる。
NIKKEI NET2009年3月2日

どうやら記事の見立ては正しいようです。
ヤフーの余剰キャッシュは、ヤフーの価値創造のために投資されることを期待して株主価値の一部を構成しているのに、それを親会社が費消するということになれば、その部分は株主価値から吹き飛びます。

【4689】ヤフー(株)

【4689】ヤフー(株)

ソフトバンクは、「グーグルを追撃するには、ヤフーがデータセンター事業を持って内製化し、将来の展開に備える必要がある。主要子会社であるヤフーの企業価値を上げることは重要。」と説明しています。

内製化のためのグループ再編であるなら、合併させれば良いのに、と私は思います。

ところで、譲渡代金450億円の内訳は、

「被買収企業の純資産評価額180億円、のれん代60億円、買収によって引き継ぐ税務上の繰越欠損金210億円」                                             (前掲紙)

ということです。

要するに、繰越欠損金をキャッシュに変えるために行われたディールなんですね。

【リンク】

2009年2月19日「次世代インターネット事業の戦略的基盤構築に向けた当社子会社株式のヤフー株式会社への譲渡について」ソフトバンク株式会社

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