介護ロボットスーツを手掛けるサイバーダインが26日、東証マザーズ市場に上場した。成長期待を背景に、公募・売り出し価格(公開価格、3700円)の2・3倍の8510円で初値をつけた。
(日本経済新聞2014年3月27日11ページ)
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2月20日のエントリー「サイバーダイン、議決権10倍の種類株を活用」の続報です。
「技術が軍事転用されることを防ぐ」(山海嘉之社長)ため、議決権が普通株の10倍という種類株を別途発行。上場後の議決権比率は山海社長と同氏が代表を務める一般財団法人が合計で88%を占める。」(前掲紙)
特定の株主に議決権を集中させる種類株を上場会社が発行する初めてのケースですが、とりあえず株価への影響は限定的でした。
しかしまだ上場したばかり。ガバナンスが有効に機能するかどうかも含め注視する必要があります。
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海外通・政策通として知られ、コーポレートガバナンス関連の改革などのキーマンでもある塩崎恭久・自民党政務調査会長代理に聞いた。
(日経ヴェリタス2014年3月9日3ページ )
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「自己資本利益率(ROE)は海外に比べて低い。生産性も劣っている。
原因のひとつが株式持ち合いだ。解消が進んだ印象があるが、実態をみるとまだ多い。地方の有力企業の株式を地銀が持つ例も目立つ。かつてのドイツは日本のように株式を持ち合っていたが、シュレーダー前首相の時代に改革に取り組み、持ち合いを縮小した。その結果、企業の資本効率が高まった。日本も例えば5年など期限を区切り、持ち合いを減らすような規制が考えられる」(前掲紙)
ドイツは、シュレーダー首相時代に、国内外からの投資促進を目的に、法人の株式譲渡益課税を撤廃しています(1年超保有の場合)。塩崎氏はシュレーダーのトップダウンで押し切るすごさを評価しており、独立取締役の複数選任も、「自分が首相になったら一発でやる」と明言しています。
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なし
東京証券取引所は19日、筑波大学発のロボットベンチャー、サイバーダイン(茨城県つくば市)の東証マザーズ上場を承認したと発表した。上場は3月26日。
(日本経済新聞2014年2月20日9ページ )
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「上場株式の10倍の議決権がある種類株を経営者が持ち、上場後も実質的に支配権を握る仕組みをとる。こうした種類株を使った新規上場はグーグルやフェイスブックなど米IT(情報技術)企業に多いが、日本では初めて。」(前掲紙)
普通株式の単元株式数は100株、B種類株式の単元株式数は10株とし、B種株式は創業者で社長の山海氏と一般財団法人山海科学技術振興財団及び一般財団法人山海健康財団が保有するスキームになっています。山海社長は上場後も9割の議決権を保有することになります。
種類株式を活用する理由を有価証券届出書において会社は次のように説明しています。
「普通株式及びB種類株式について異なる単元株式数を定めているのは、当社の議決権を山海嘉之及び本財団法人に集中させることにより、当社グループの先進技術の平和的な目的での利用を確保し、人の殺傷や兵器利用を目的に利用されることを防止することにあります。
また、当社グループの将来ビジョンである、少子高齢化という社会が直面する課題を解決しつつ、人支援産業という新しい産業分野を開拓するためには、サイバニクス技術の研究開発と事業経営を一貫して推進する必要があります。山海嘉之は、このサイバニクス技術を創出し、現在もサイバニクス研究の中心的な存在であり、更にその革新的な技術を社会に還元するための事業推進者でもあります。このため、当社グループの企業価値向上(株主共同利益)には、当面の間、山海嘉之が経営に安定して関与し続けることが必要であると考えており、これを実現可能とするため、本スキームを採用しております。」(前掲紙)
平和的な目的での利用を確保し、人の殺傷や兵器利用を目的に利用されることを防止するのは、企業として当然のことではありますが、これを担保するのは究極的には国家の役割であると考えます。種類株式を活用し上場すること自体は否定されるべきではありませんが、ガバナンスが有効に機能するかどうかも含め注視する必要がありますし、市場の株価形成も注目されます。
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アベノミクスで上昇を続ける日本株相場。原動力は外国人の買いだ。今年3月末の外国人持株比率は28.0%と過去最高を更新した。
(日経ヴェリタス2013年12月10日1ページ )
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「バブル崩壊以降、日本のガバナンスの歴史は不祥事対応に焦点が当たることが多かった。粉飾決算などが発覚すると、コンプライアンスの観点から社外取締役や監査役に元検事の弁護士などが起用された。しかし高い資本効率などを求める外国人株主の存在感が高まったことで、ガバナンスの目的が企業価値の向上へと変わりつつある。」(前掲紙)

外国人持株比率が高いことで企業価値やガバナンスのプレッシャーが高まりROEや社外取締役の比率が高まっているというより、高ROEを指向する会社はガバナンスへの意識も高く外国人株主の比率も高い、ということだと思います。
ただいずれにしても会社は誰のものか、という哲学論争ではなく、経営者は企業価値や株主価値を向上させることが責務である、という共通認識が形成されつつあるように感じます。そしてそれは戦後変わることがなかった日本的経営の大いなる変化を意味しています。
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経済産業省はベンチャーキャピタル(VC)への投資を優遇する税制を拡大する検討に入った。出資した企業が法人税を圧縮できるVCの規模を「20億円以上」から「10億円以上」に緩める方向だ。小規模のVCへの資金供給を円滑にする狙い。
(日本経済新聞2013年11月20日4ページ )
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VCへの出資額への8割までを損金算入できるという税制優遇策です。
「公的機関の出資分も合わせて20億円以上なら、優遇を受けられるようにする。ただ、財務省は要件緩和に慎重で、調整が難航する可能性もある。」(前掲紙)
企業に溜ったキャッシュをはき出させることが狙いなのでしょう。
しかし、上場会社の場合、資本市場の規律が働く環境にあれば、無駄にキャッシュをため込むことはないはずで、そのような環境整備を行うことが本筋だと思います。
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2013年4~9月期の連結純利益が過去最高を更新した日本たばこ産業(JT)。業績好調のJTが国内たばこ事業の大規模なリストラに乗り出す。民営化から30年近くたった現在も日本政府が33・3%を出資する「国策会社」が従業員の削減にまで踏み込む大なたを振るうのはなぜか。背景を探ると、株式市場を強く意識した経営に軸足を移す姿が浮かび上がる。
(日本経済新聞2013年11月14日2ページ)
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「「剰余金の配当率は国外の競合他社よりも格段に低い。1株当たり120円配当せよ」。JTの6月の株主総会ではこんな株主提案が注目を集めた。突き付けたのは英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)。過去にはJパワー(電源開発)の株式買い増しを計画し、増配などを要求したこともある。
JT取締役会はTCIの4つの提案に反対を表明。総会でもTCIの提案は否決された。それでもTCIは意に介さない。JTとTCIは実は年に数回、会合の場を設けている。その内容をうかがい知ることができるのがJTが次々に打ち出す株主対策だ。3月には2500億円分の自社株買いを実施。配当性向を13年度の40%から15年度には50%に高める計画を掲げる。」(前掲紙)
サププライム前の環境に近づいてきました。やがて海外の株主だけでなく、日本の株主も「物言う」ようになるでしょう。
そしてそれは資本市場の規律として機能すべきことが本来期待されているのです。
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円安で輸出企業の利益は増えているが、賃金の増加につながっていない。円安で物価が上昇しているため、国民生活はむしろ苦しくなっている。政府は企業に賃上げを求めているが、これは自由主義経済の原則にもとる。賃上げは現行の政策では難しく、賃上げ要請は政策の手詰まりを意味する。
(日経ヴェリタス2013年11月10日51ページ 異見達見野口悠起雄早稲田大学総合研究所顧問)
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「企業利益の増加がいずれは賃金上昇に波及するという漠然とした期待があったのだが、いつになっても実現しない。9月の実質賃金は、前年比で1.2%の下落となった。この問題への対処は、緊急の課題だ。」(前掲紙)
賃上げを企業に求めるのは筋違い。それは確かにその通りです。しかし、無意味に内部留保を積み上げている企業が多いこともまた事実です。
「アベノミクスが投資家の期待を高めている間に、企業は内部留保を再考すべきである。選択肢の一つは、積極的な事業展開により、経営を量と質の両面で改革することである。このための厚い内部留保であれば大いに歓迎する。もう一つの選択肢は、量を追わず経営の質を高めることである。これには潤沢な現金保有は不要だから、ドイツ並みの高配当を目指し、その結果として投資家を喜ばせればいい。」(日本経済新聞2013年11月12日21ページ大機小機)
あるべき論はそうですが、そうするインセンティブが企業にはありません。
無意味に内部留保を積み上げている企業は買収リスクが上昇する、だからこれを有効利用することで株価が下がらないように(上昇するように)企業は努力する、こういったガバナンスの要の部分が日本では全く機能していません。
この状況を打破するには、敵対的買収(誰にとって敵対的?)を可能にするような法制度その他インフラを整備することが必要です。
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ドイツ銀行の資産運用部門で最高投資責任者を務めるアソカ・ヴァマン氏も、先週東京を訪れた一人。「夏以降、日本株を買い増している。日経平均株価は5年後、2倍になっていると思う」と強気だ。
理由の一つが、夏から市場で静かに進行している異常現象だ。長期の基準金利、国債10年物の利回りが実質マイナスに転じている。
(日本経済新聞2013年10月29日17ページ 一目均衡)
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「ヴァマン氏の読みはこうだ。「経営者は資金を眠らせておくのではなく、設備投資や企業買収に有効活用する圧力にさらされる。家計も大量の預金を目減りから守るために、株式などのリスク資産に移すだろう」。どちらのシナリオも、株高という結論に向かう。」(前掲紙)
資金を有効な投資に回せないのであれば、投資家は増配・自社株買いといった株主還元を求めることになるでしょう。これも余剰資金が株価に反映されていない銘柄については株高に向かうと考えられます。
そして、十分な施策を講じず株価が割安なまま放置されてるなら、そういった企業は買収リスクにさらされることになります。
これが資本市場の規律です。
わが国の問題の一つはこの資本市場の規律が十分に効かない仕組みになっているところにあります。
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トムソン・ロイターによると、米主要500社の2013年の純利益は前期に比べ約5%増える見通し。増益基調を維持するが、米財政問題の影響などで先行きには不透明感が漂う。
(日経ヴェリタス2013年10月27日3ページ )
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「市場が注目するのは、欧米に比べてなお格差が大きいROEの動向だ。野村證券によると、日本の主力企業のROEは前期の5%台から今期9%台まで回復するが、13~14%の欧米とはなお差がある」
(前掲紙)
メリルリンチ日本証券の神山直樹チーフストラテジストは、
「年1割の増益が続き、その6割を株主に配分すれば、18年度にはROEが15%まで上昇する可能性もある」(前掲紙)
と言っています。
達成不可能な水準ではないという意味で言っているのでしょうが、多くの経営者に株主価値を創造しようという強い意識がない現状を鑑みると机上の空論と言わざるを得ません。今後外資による日本企業への投資が増えれば、株主のプレッシャーが強くなっていくでしょうから、そうなれば徐々に世界水準に近づいて行くことになるかも知れませんが、まだまだ時間がかかるように思います。
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日経フォーラム世界経営者会議
ゲームの顧客基盤生かす
(日本経済新聞2013年10月25日14ページ 攻めの経営を聞く)
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「変化が速いネット分野は人材を育てる時間が少ないのでは
変化が乏しい安定期は、その分野に精通した人材をM&Aなどで外部採用することは有効だ。だが変化が激しい今は社内での人材育成がカギを握る。変化に対応でき、実行力や起業家精神のある人材を育てることが重要だ。現場に任せて若手を育てている。」(前掲紙)
“M&Aで人材を外部採用”
なかなか斬新な響きです。とても良いですね。
M&Aで買われた会社の従業員はリストラされるという強迫観念が、国富を創造するM&Aの実行を止める、ということがままありますが、買う側から見ると事業とともに良いヒトを採用できることがM&Aの動機になることもよくあるのです。
雇用ルールの改革が進まない現状では、M&Aの実行をもっと容易にできるよう、税制その他の面から支援することが必要であるように思います。
M&Aによりヒトが異動することが普通になれば雇用ルールを改正することに対する抵抗感も薄れていくのではないでしょうか。
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