ソニーは6日、パソコン事業の売却とテレビ事業の分社化を発表した。海外メディアのブログなどでは、ソニーの株主で、エンターテインメント事業の分離上場を提案した米有力ヘッジファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブ氏がリストラを促したとの分析が見られた。さらに抜本的な改革が進む可能性があるとの指摘も目立った。
(日経ヴェリタス2014年2月16日65ページ グローバルウオッチ)
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ソニーのリストラを評価する声が目立つ一方、次のような批判があることが注目されます。
「投資ブログの「Market Hack」は違う見方をする。2000年代初めに10兆円を超えていたソニーの時価総額は足元で1兆8000億円程度に減少し、負債額に接近している。同ブログは「単純化して言えば、株主の利害より債権者の意向によって経営が左右される状況に近づいている」と解説した」(前掲紙)
正しい見方だと私は思います。こういう声が日本国内からは聞かれないのは何故でしょう?
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半導体大手のルネサスエレクトロニクスは2015年度末までに国内で5400人の人員削減に踏み切る方針を固めた。約2万人にのぼる国内従業員の25%に相当する。同社は国内の工場や開発拠点の集約など構造改革を進めている。閉鎖工場のほか、管理部門などを含めて人員削減を加速し、経営再建を急ぐ。
(日本経済新聞2014年1月22日10ページ )
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「ルネサスは2013年9月末、政府系ファンドの産業革新機構、トヨタ自動車やパナソニックなど大口顧客8社を引受先とする1500億円の第三者割当増資を実施。69・16%を出資する革新機構が主導して再建を目指すことになった。
その結果、大口顧客向けに供給する採算の取りづらい製品の開発・生産中止が容易でなくなっている。海外の同業他社幹部は「ルネサスはなぜ付加価値の高い製品を安く売るのか」と指摘。価格の引き上げも思うにまかせない状態も続いているようだ。」(前掲紙)
ルネサスは、2012年にKKRが買収しようとしていたところ、最終的には産業革新機構が主導して再建を目指すことになりました。しかし今日のようなニュースを見るとその選択が本当に正しかったのか疑問に思います。
日本プライベート・エクイティ協会が2013年3月8日付で出した、「我が国経済の本格的再生に向けた 民間投資資金の積極的活用に関する提言」は次のように述べています。
「市場メカニズムが正常に機能している場面において、政府及び関係諸 機関が、成長分野を自ら探し出し成長資金を直接投じ、あるいは問題を抱えた企業に対 する出資を直接行って支援するのは、民間との正常な役割分担を超える危険性があるも のと考えます。政府及び関係諸機関による経済復興政策は、本来的には制度設計や規制 整備による市場機能の正常化・活性化にあるべきであり、それを超えて、政策金融によ る投融資が行われ、あるいは官製ファンドによる出資が行われるのは、あくまで市場に おけるリスクマネーの供給が機能不全に陥っており、市場機能に委ねているだけでは市 場メカニズムが正常に働かず、公的な支援がない場合に比して社会的コストが膨大にな ると判断される場合に限定されるべきものと考えます。」
政策的な支援を行ったことで市場メカニズムに従った価格付けも出来ないようであれば、正に本末転倒、その結果5400人もの従業員の追加削減を行うとは、いったいどういうことでしょう?
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安倍晋三政権は今年初めにまとめた緊急経済対策にあわせて、立て続けに官民ファンド(基金)の創設を決めた。ベンチャー育成、インフラ整備、日本文化を売り込む「クールジャパン」と、経済再生に絡めた看板は様々だ。基金の大半はまだ機能していない。
(日本経済新聞2013年7月11日2ページ)
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「「元祖・官民ファンド」と言われる産業再生機構で、産業再生委員長を務めた高木新二郎弁護士は「官製ファンドによる民業圧迫が起きている。特に(経営不振企業を再生させる)事業再生ファンドが駄目になってしまった」と批判する。
13年度予算までに政府が設立を決めた官民ファンドの規模は出資額や政府保証枠を含め計4兆円を上回る。民間ファンド、ニューホライズンキャピタルの安東泰志会長は「民間基金の規模が1兆円しかない日本で、数兆円規模の官製ファンドはまるで池のなかの鯨。(企業再生の)価格形成も大きくゆがめられる」と憤る。」(前掲紙)
この点、私も当ブログで繰り返し指摘しているところです。
再生ファンドやプライベート・エクイティファンドは極めて専門性が高く、リスクも大きいので、国が安易に手を出せる領域ではないのです。
国がやるべきことは、民間のファンドが仕事をしやすくできるように法制度等のインフラを整備することです。
特に内外無差別、国際的なイコールフッティングの観点から見直すべき点が多くあります。
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「いたずらに財政負担を生じせしめ、国民負担を招く危険性がある」米コールバーグ・グラビス・ロバーツ(KKR)、国内独立系のアドバンテッジパートナーズなど国内外の主要買収ファンドで作る民間団体、日本プライベート・エクイティ協会が3月に出した声明は、M&A業界関係者の間で波紋を呼んだ。直接の名指しを避けているものの、産業革新機構の投資活動を強く意識したものであることは、関係者の誰が見ても明らかだった。
(日経ヴェリタス2013年4月7日51ページ)
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日本プライベート・エクイティ協会が3月8日付で出した、「我が国経済の本格的再生に向けた 民間投資資金の積極的活用に関する提言」は次のように述べています。
「市場メカニズムが正常に機能している場面において、政府及び関係諸 機関が、成長分野を自ら探し出し成長資金を直接投じ、あるいは問題を抱えた企業に対 する出資を直接行って支援するのは、民間との正常な役割分担を超える危険性があるも のと考えます。政府及び関係諸機関による経済復興政策は、本来的には制度設計や規制 整備による市場機能の正常化・活性化にあるべきであり、それを超えて、政策金融によ る投融資が行われ、あるいは官製ファンドによる出資が行われるのは、あくまで市場に おけるリスクマネーの供給が機能不全に陥っており、市場機能に委ねているだけでは市 場メカニズムが正常に働かず、公的な支援がない場合に比して社会的コストが膨大にな ると判断される場合に限定されるべきものと考えます。」(前掲紙)
至極もっともです。
私も当ブログで同様の主張を何度も行っています。
2013年2月27日「エルピーダメモリの更正計画案認可へ」
2013年2月21日「ファンド、米でM&A活況」
2012年10月19日「JAL株、外国人買いで回復」
2012年9月25日「ルネサス、官民で買収」
2012年8月29日「KKR、ルネサスの経営権取得へ」
2012年2月8日「半導体3社、事業統合交渉」
2009年6月30日「エルピーダ、公的支援本日決定」
官製ファンドへのニーズが何故あるのか?
突き詰めていくと、日本企業(日本人)の持つ根拠のない外資又は外資的なものへの畏怖にぶち当たるように思います。
有力なプライベート・エクイティ・ファンドの多くは、米国のファンドです。また国内系のファンドであっても、その手法は米国のファンドと大きな違いはありません。日本企業の多くはこういったファンドの出資を仰ぐことに抵抗があるのです。
今日の記事で冨山和彦氏が、外資を活用する手があるか、という質問に対し、次のように答えています。
「1つの方法ではある。だが彼らは投資リスクに加え為替リスクを負担するため、高いリターンを求める。企業再生ファンドは本来、極めてローカル色が強い。(事業の内容を)肌感覚で理解できない外資が手掛けると(サーベラスが要求したと西武ホールディングスが主張しているような)やれ球団を売れ、鉄道を売れという空理空論になりがちだ」(前掲紙)
私は正直冨山氏が何を言っているのか理解できません。
だって、すべての企業がローカル色が強いじゃないですか?
再生ファンドを活用すべき場面は、まさにそのローカル色だけでは立ち行かなくなったときでしょう。
こんな理屈で外資を拒絶していたら、日本にヒト、モノ、カネが集まってくるなんてことは未来永劫ありませんね。
【リンク】
2013年3月8日「我が国経済の本格的再生に向けた民間投資資金の積極的活用に関する提言」一般社団法人 日本プライベート・エクイティ協会 [PDF]
西武ホールディングス(HD)は14日、早期の株式上場を目指すために「上場に向けたガバナンス推進有識者会議」を同日付で設置したと発表した。社外の有識者が同社の取締役会に助言することにより、ガバナンス体制を一段と強化するとしている。
(日本経済新聞2013年3月15日11ページ)
【CFOならこう読む】
「西武HD株式の32%超を保有する筆頭株主米サーベラスがTOBで株式の買い増しを表明しており、当面この課題に対応する。」(前掲紙)
サーベラスは現在の保有比率32.4%を、最大4%引き上げて36.4%を取得することを表明しています。
西武HDは、有識者会議の設置目的について、
「なお、当社は、2013 年 3 月 12 日より開始されたサーベラス・グループの関連事業体で あるエス-エイチ ジャパン・エルピーによる当社株式に対する公開買付けに関する当社と しての意見表明につきましても、当該有識者会議での検討内容および当該有識者会議から の当社取締役会に対する助言等を踏まえ、慎重に検討を重ねて参る所存です。」(2013年3月14日 リンクのプレスリリース)
としており、実質的にはサーベラスのTOBの諮問のために設置されたものと思われます。
サーベラスは2006年に、約1000億円の出資を実施しています。西武HDは昨年中の上場を目指していましたが、サーベラスと現経営陣との間で、IPO価格などの上場条件を巡って意見の相違が深まっていると報道されています。
PEファンドであるサーベラスは、IPOの売出で一部Exit するので、その際の価格が決定的に重要です。TOBによる出資比率引き上げにより、取締役の派遣など経営への影響力を強め、Exitの極大化を図るものと思われます。
【リンク】
2013年3月14日「「上場に向けたガバナンス推進有識者会議」の設置について」株式会社西武ホールディングス [PDF]
会社更生手続き中のDRAM大手、エルピーダメモリの更生計画案が、月内にも東京地裁の認可を受ける見通しとなった。約4400億円の負債を抱えて経営破綻してからちょうど1年、米半導体大手マイクロン・テクノロジーの傘下で再建を目指すことが正式に決まる。エルピーダの技術力を生かし、半導体メモリー最大手の韓国サムスン電子を追撃する。
(日本経済新聞2013年2月27日11ページ)
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「マイクロンは2000億円でエルピーダを買収する。まず13年前半にエルピーダの全株式を600億円で取得し、完全子会社にする。残る1400億円は19年までにエルピーダから供給を受けるDRAMの対価として支払う。エルピーダは2000億円を返済原資に充てる。負債総額4400億円のうち、約54%が返済されない計算になる。」(前掲紙)
エルピーダは2009年に改正産業活力再生法(産活法)の認定を受け、業績不振に陥った事業会社を公的資金を使って支援する枠組みの適用第1号となりました。このとき私は、このブログで、政府が個別の民間企業を公的に支援するのは止めるべきだと言いました(2012年6月30日「エルピーダ、公的支援本日決定」)。
また、このようなリスクの高い投資は、本来再生ファンド等その道のプロフェッショナルが手掛けるべきで、国がしゃしゃり出る分野ではないのです。
結果国はこの投資により280億円の損失を被りました。
(「エルピーダ破たん、公的負担280億円発生で問われる産業政策」)
この事実をしっかりと受け止め、今後の産業政策に活かして行ってもらいたいのものです。
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業績不振の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスに対し、トヨタ自動車やパナソニックなど日本を代表する製造業が、政府系ファンドの産業革新機構と組み、1000億円超を共同出資する方向で調整に入った。すでに交渉中の米投資ファンドへの対抗策をつくり、年内に過半数の株式取得を目指す。ルネサスは車や家電を制御するマイコンで世界首位。基幹部品の安定調達に向け、官民挙げて異例の支援体制を組む。
(日本経済新聞2012年9月22日1面)
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「出資企業としては日産自動車やホンダ、キヤノン、ファナックなどの名前が挙がっている。自動車部品メーカーではトヨタ系のデンソー、ホンダ系のケーヒンのほか、世界大手の独ボッシュなど海外勢にも出資を求めている。第三者割当増資などにより、産業革新機構と合わせて1000億円超を共同出資し、ルネサスを買収する方針だ」(前掲紙)
ルネサスについては、8月末に米系PEファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が出資する案を示しています。
「ただKKRが大胆な工場の集約などに踏み切った場合、マイコンの安定調達に支障をきたす可能性がある。」(前掲紙)
また、KKRは投資を回収するため、海外の企業にルネサスを売却する懸念もあるとのことです。
しかし、私にはこれが何故国庫を投入する理由になるのかわかりません。安定供給が必要なら、必要な企業が必要な範囲で第三者割当増資に応じるというのであれば理解できます。
しかし、民間企業を救済するのにどうして税金を投入する必要があるのでしょうか?
海外の企業うんぬんというのも上場していれば常にあり得る話で、それが大きな問題であるのなら、はなから国営企業として運営すれば良いのです(もちろん国民の理解が得られればの話です)。
経営不振企業の再建といったリスクの高い投資は、もとより国が行うべきものではありませんし、民間企業を国が救済したりしなかったりするのは公平性の点から問題です。またJALの例を見ても明らかなように、民間企業同士の競争に国が介入するのは、資本主義の根幹を揺るがしかねないと、私は思います。
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日本のハイテク企業コバレントマテリアルの社債保有者は近く同社の運命について決定を下す。社名が東芝セラミックスだった2006年以降、競争激化と技術的優位性の低下で利益は半減した。業績が好調な時には借金は大きな問題ではなかったが、今では長期のゼロ金利政策にもかかわらず、大変な重荷となっている。
(日本経済新聞2012年9月6日6面英フィナンシャルタイムズ特約)
【CFOならこう読む】
日経新聞のタイトルは、”「明日の企業」に資金を”、と前向きな応援記事のように見えますが、
英文のタイトルは、
”Japan, where capital flows to yesterday’s companies”、
つまり「昨日の企業」に資金が流れる日本、について悲観的に分析を行っている記事です。
最大の問題点を、次のように的確に指摘しています。
In most countries, robust restructuring and bankruptcy processes are an inherent part of a healthy economic ecosystem. But that fundamental point still isn’t really accepted in Japan.
大胆な企業再編と破産手続は健全な経済システムに本来備わっており、多くの国では実践されている。しかし、日本ではその基本的なことがいまだにまともに受け入れられていない。
的確に指摘はしていますが、何故そうなのかという根源的な部分にまでは言及されていません。
このブログで何度も書いていますが、日本の病巣の根源は次の部分にあります。日本の雇用形態は今もって終身雇用を前提にされており、いったん雇用したら企業は定年まで雇用を継続する責務があるとされています。
人的資源が流動化することを前提とした仕組みになっていないので、働く人たち(経営者も含む)の行き場がなくなるような企業再編や破産手続に進むことができないのです。
「昨日の企業」から「明日の企業」に人的資本が流れる国に変わらなければなりません。そうでないと、「昨日の企業」に資金が流れ続けることになるでしょう。
これは政治主導で解決すべき最優先課題です。
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会社更生手続きを進めているエルピーダメモリの坂本幸雄社長が退任する意向を固めたことが21日、明らかになった。同社は2013年春に米半導体大手マイクロン・テクノロジーの完全子会社化となる予定。東京地裁に同日提出した更正計画案が承認されたマイクロンの出資が完了した後に退任し、経営責任を明確にする。
(日本経済新聞2012年8月22日1面)
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更正計画の概要は以下の通りです。
マイクロンとのスポンサー契約にしたい総額2000億円の支援金を前提に、一定の手続費用等を 控除して、更生担保権者・更生債権者への支払いが行われることになります。具体的に は、スポンサー契約の実行時に、マイクロンは600億円の現金をもって、エルピーダへの100%出資を行います。その後、エルピーダは、マイク ロンの子会社として、マイクロンに対して行うファンダリ(製造受託)事業等を通じて、 2019年までにキャッシュフロー1400億円をマイクロンの支払いにより得ます。これらの 支払いを原資とする更生計画に基づく債権者への弁済により、残りのエルピーダに対す る更生債権の支払い義務は、更生手続に基づき免除されます。
エルピーダは2009年に改正産業活力再生法(産活法)の認定を受け、業績不振に陥った事業会社を公的資金を使って支援する枠組みの適用第1号となりました。このとき私は、このブログで、政府が個別の民間企業を公的に支援するのは止めるべきだと言いました(2012年6月30日「エルピーダ、公的支援本日決定」)。公的支援は単なる一時しのぎである、というに止まらず、へたに公的支援をしたばかりに抜本的な再建策が講じられず余計に事態が悪化する、ということもあるのです。
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シャープは複写機や空調機器など主要事業を売却する方針を固めた。スマートフォン向けの液晶パネルをつくる亀山工場を別会社にして、他社からの出資を受け入れることも検討する。
同社は今期の最終損益が2500億円の赤字になる見通し。中小型液晶など競争力ある分野に事業を絞り込み、経営支援を取り付けて経営再建を急ぐ。
(日本経済新聞2012年8月17日1面)
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「シャープは来年秋に約2000億円の転換社債の償還を予定するなど、5000億円規模の資金の借り換えなどが必要になる見通し。主力2行は資本・業務提携先のホンハイ精密工場によるシャープ本体への出資や追加リストラを条件に、金融支援を検討する」(前掲紙)
2012年6月末時点の有利子負債残高は約1兆2500億円。自己資本比率は3月末の23.9%から6月末は18.7%に低下。また株主資本は3月末の7,192億円(うち利益剰余金2,599億円)から6月末は5,753億円(うち利益剰余金1,160億円)に減少しています。
2013年3月期の通期の当期純損失予想は2500億円ですので、利益剰余金はほぼすべて吹っ飛ぶことになります。
リストラによる資産売却と有利子負債削減は緊急の課題ですが、ゴーイングコンサーンのためには資本増強が必須になります。問題は誰がこれを引き受けるか、です。
さらに棚卸資産が3月末5274億円から6月末5137億円とほとんど減っていないことも気になります。
現行の棚卸資産の評価に関する会計基準では、正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とするとされており、想定外の規模で棚卸資産評価損計上を余儀なくされることも考えられるからです。
事態は急を要しています。
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