三井住友フィナンシャルグループ(8316)は30日、消費者金融大手プロミス(8574)の完全子会社化に向けた基本契約を締結したと発表した。傘下の三井住友銀がTOBでプロミスの全株式を取得する。
(2011/9/30 16「三井住友FG、プロミスを完全子会社化 増資引き受けも」日本経済新聞 )
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TOB価格は1株780円。さらにSMFGグループはプロミスが実施する第三者割当増資約1,200億円(1株当たり531円)を引き受ける。プロミスはこれにより、過払い返還に向けた引当金を積み増しし、財務体質を強化する。SMFGグループは、TOBと第三者割当増資と合わせて総額2,000億円を投資することになる。

【リンク】
2011年9月30日「三井住友銀行による当社株式等に対する 公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」プロミス株式会社 [PDF]
「三井住友銀行によるプロミスに対する公開買付けの開始及び三井住友フィナンシャルグループ又は三井住友銀行によるプロミスの第三者割当増資の引受けのお知らせ(11/35)」三井住友銀行
パナソニックは29日、上場子会社の三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化するために最大8184億円のTOBを実施すると発表した。3社の一体運営を従来以上に進めて環境エネルギー分野などを強化、2012年度に営業利益ベースで600億円の相乗効果を生み出す。2012年1月をめどに3社の事業を分野ごとに抜本再編、商品ブランドは原則「パナソニック」に統一する。
(日本経済新聞2010年7月30日1面)
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「パナソニックは現在、三洋株を議決権ベースで50.2%、パナ電工株を51.8%保有。買付価格は三洋株が1株138円、パナ電工株が1.110円、28日までの直近1ヶ月間の終値平均にそれぞれ21%、22%のプレミアムを加えた。全株応募があった場合の買い付け額は三洋が約4222億円、パナ電工が約3962億円。
TOB期間は8月23日〜10月6日で株数に上限・下限を設けない。応募のなかった株式についてはパナソニック株との株式交換を実施。来年4月をめどに両社の完全子会社化を完了させる」(前掲紙)
三洋電機のTOB価格138円のプレミアムの水準は次の通りです。
「当社による本公開買付けの開始についての公表日の前日である平成22 年7月28 日の東京証券取引所市場第一部における対象者の普通株式の普通取引終値118 円に対して16.9%(小数点以下第二位を四捨五入、以下本項の%の数値において同じ。)、過去1ヶ月間(平成22 年6月29 日から平成22 年7月28 日まで)の普通取引終値の単純平均値114 円(小数点以下切捨て、以下本項の円の数値において同じ。)に対して21.1%、過去3ヶ月間(平成22 年4月30 日から平成22 年7月28 日まで)の普通取引終値の単純平均値126 円に対して9.5%、過去6ヶ月間(平成22 年1月29 日から平成22 年7月28 日まで)の普通取引終値の単純平均値137 円に対して0.7%のプレミアムをそれぞれ加えた金額となります。」
(平成22年7月29日「三洋電機株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」)
パナソニック電工のTOB価格1,110円のプレミアムの水準は次の通りです。
「当社による本公開買付けの開始についての公表日の前日である平成22 年7月28 日の東京証券取引所市場第一部における対象者の普通株式の普通取引終値974 円に対して14.0%(小数点以下第二位を四捨五入、
以下本項の%の数値において同じ。)、過去1ヶ月間(平成22 年6月29 日から平成22 年7月28 日まで)の普通取引終値の単純平均値909 円(小数点以下切捨て、以下本項の円の数値において同じ。)に対して22.1%、過去3ヶ月間(平成22年4月30 日から平成22 年7月28 日まで)の普通取引終値の単純平均値948 円に対して17.1%、過去6ヶ月間(平成22 年1月29 日から平成22 年7月28 日まで)の普通取引終値の単純平均値1,032 円に対して7.6%のプレミアムをそれぞれ加えた金額となります。」
(平成22年7月29日「パナソニック電工株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」)
なお完全子会社化のために、来年4月をめどに行なわれる株式交換において、三洋電機及びパナソニック電工両社の株式の対価(パナソニック株式。ただし、受け取るべき株式の数に一株未満の端数がある場合、当該端数部分については、会社法に基づき金銭の分配となる。)を決定するに際しての評価は、本TOBと同一の価格を基準にする予定であるということです。
パナソニックは、昨日、5000億円を上限とする普通株式の募集について発行登録を行なっています。TOB費用に充てるため、今後増資が行なわれる可能性があります。
完全子会社化後、重複分野を解消するために事業再編を行い、その上でブランドをPanasonicに一本化することが予定されています。
「平成24 年1月を目途に、事業体制を再編します。その基本的な考え方は、「お客様価値の最大化」を基軸として、「コンシューマ」「デバイス」「ソリューション」の3事業分野ごとに、3社の事業・販売部門を統合・再編し、それぞれの事業特性に最適なビジネスモデルを構築する、というものです。各事業・各業界で、グローバル競争を勝ち抜ける体制を確立してまいります。
(中略)
さらに、こうした再編とあわせて、ブランドについても、将来的に原則「Panasonic」へ統一する方向で、検討を行ってまいります。ただし、事業・地域によっては一部「SANYO」の活用も継続する予定です。」(「パナソニック株式会社によるパナソニック電工株式会社及び三洋電機株式会社の完全子会社化に向けた合意のお知らせ」)
【リンク】
2010年7月29日「パナソニック株式会社によるパナソニック電工株式会社及び三洋電機株式会社の 完全子会社化に向けた合意のお知らせ」パナソニック株式会社、パナソニック電工株式会社、三洋電機株式会社[PDF]
2010年7月29日「三洋電機株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知ら」パナソニック株式会社[PDF]
2010年7月29日「パナソニック電工株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」パナソニック株式会社[PDF]
2010年7月29日「当社普通株式の募集に係る発行登録について」パナソニック株式会社[PDF]
環境銘柄の代表格、パナソニック電工株が5月上旬から大幅に値下がりしている。変調の背景には親会社パナソニックの「戦略転換」がある。「2012年度までの中期計画では、パナ電工や三洋電機との資本関係はこのまま」。
下落のきっかけになったのが、7日夜のアナリスト説明会でパナソニックの大坪文雄社長が述べたこの発言だ。
(日本経済新聞2010年5月26日15面)
【CFOならこう読む】
「直後の10日、パナソニックの完全子会社化をにらんで買われていたパナソニック電工株は7%安と急落。26日までの下落率は18%に達し、この間の日経平均株価の下落率(約8%)を大きく上回る」(前掲紙)
プレミアム期待が剥げ落ちたということです。
「背景にあるのが財務の悪化だ。三洋電の買収などで3月末の有利子負債は手元資金を約1200億円上回った。借入超過は14年ぶり。パナ電工の完全子会社化にはプレミアムを含め5000億円規模の資金が必要で、約16%分の金庫株(約4300億円相当)を活用しても余裕は乏しい。「強固な財務を取り戻す」(大坪社長)方が優先順位は高くなる」(前掲紙)
「強固な財務」とは、Net debtゼロを指します。しかし「パナ電工はパナソニックの連結経営に欠かせない存在」であるなら、市場環境を考えても今が完全子会社化の絶好のタイミングだと思います。無借金経営が何より優先するというのは理解できません。
【リンク】
なし
セブン&アイ・ホールディングスとイオンが苦闘している。国内消費の成熟を乗り越えようとM&Aなどで拡大路線を突き進んできた結果、ここへきてその非効率性が浮き彫りに。2007年2月期に営業最高益を記録した後は足踏みが続き、米タルボットの売却や西武百貨店の店舗閉鎖などに追い込まれた。収益力や財務力では差があるものの、「グループ力」のテコ入れが課題だという点は共通する。持株会社のあり方を含めた抜本的な経営体制の見直しが、待ったなしだ。
(日経ヴェリタス2010年2月21日14面)
【CFOならこう読む】
「イオンの上場子会社は17社と国内企業で最多。持分法適用会社は7社ある。海外でも子会社が4社上場している。かつては上場益を出店など成長投資に充てる前向きな目的もあったが、今では少数株主が増えたことで利益の社外流出を招くマイナス面が指摘されるようになった。前期末の少数株主持分は2,838億円で純資産の実に4分の1。税引後利益の約3割が少数株主利益として流出している。
中でも「本体との関係性が強く、完全子会社すべき」(国内証券)と指摘されるのが中核子会社のイオンモール。イオンモールの今期の予想純利益は前期比1%増の216億円で、イオン連結(75億円~150億円)を上回るグループ最大の稼ぎ頭だ。
(中略)
イオンモールを株式交換で完全子会社化すると、イオンの発行済株式数(約8億株)は約2割増えるが、それでも今期の1株利益は約18円~26円(のれん代償却を除く)とイオンの会社予想(9.8円~19.6円)より増える」(前掲紙)
イオンの2010年2月期の予想1株利益は、9.8円~19.6円。株価が924円(2月23日終値)なので、PERは47.1倍~94.2倍の水準です。一方、イオンモールの2010年2月期の予想1株利益は、118.71円。株価が1,620円(2月23日終値)なので、PERは13.6倍の水準です。
ところで、自社よりも低PERの会社を合併又は株式交換で買収すれば、必ず自社のEPSは上昇します(のれん償却費を計上しないと仮定した場合)。これはコングロの算術とも呼ばれ、1960年代にEPSの成長を目的に多数のコングロマリット企業群が誕生しました。
「もっともこうしたコングロマリット・ブームは長続きしなかった。財務会計ルールの不備と投資家の一時的な錯覚につけこんだコングロ企業のゲームのルールは、やがて投資家の気がつくところとなり、1960年代末には相場下落とともに馬脚を現し、成長の息の根を止められてしまった。しかし、わが国では、こうした財務会計指標の表面的な改善を重視したM&Aも非常に多いと思われる」(経営財務入門 井手正介/高橋文郎 日本経済新聞出版社)
完全子会社化は良いのですが、EPSが改善するからといって、価値が創造されることにはならないことに注意が必要です。
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なし
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